「憲法改正」案を比較してみよう!…②
“うるはしく かきもかかずも 文字はただ
読みやすくこそ あらまほしけれ”
明治天皇御製(明治38年<1905>)
麗しく書いてもあまり麗しく書けていなくても、文字はただ読み易く書くようにしたいものだ…。
令和の御代となり、世間では慶祝ムードが広がりを見せてはいますが、政治経済においては、難問続出の気配が窺われます。
消費税増税による景気の冷え込み必至、中国産品に25%の関税を課す米中覇権戦争の緊迫化、北朝鮮のミサイル発射、欧州・英国の混迷、中国一帯一路の野望露見、韓国の反日徴用工判決成り行き、日米交渉の行方、など内外の混沌はかつてない激動を予感させ、わが国の対応も戦略的な腹をくくった対処が求められる状況に至っています。
こうなってくると、先週のブログに記したように、今一度、冷静沈着に、国の背骨である「憲法」の改正案を真面目に考えて見ることが大切になってきました。憲法の趣意は前文に書かれていると思いますので、それをとりあえず読んでみましょう。
【現行】憲法“前文”
日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。
【自由民主党】日本国憲法改正草案“前文”
(前文)
日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家であって、国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される。
我が国は、先の大戦による荒廃や幾多の大災害を乗り越えて発展し、今や国際社会において重要な地位を占めており、平和主義の下、諸外国との友好関係を増進し、世界の平和と繁栄に貢献する。
日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。
我々は、自由と規律を重んじ、美しい国土と自然環境を守りつつ、教育や科学技術を振興し、活力ある経済活動を通じて国を成長させる。
日本国民は、良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するため、ここに、この憲法を制定する。
【読売新聞】読売憲法改正試案“前文”
日本国民は、日本国の主権者であり、国家の意思を最終的に決定する。国政は、正当に選挙された国民の代表者が、国民の信託によってこれに当たる。
日本国民は、個人の自律と相互の協力の精神の下に、基本的人権が尊重され、国民の福祉が増進される、自由で活力があり、かつ公正な社会をめざす。
日本国民は、民族の長い歴史と伝統を受け継ぎ、美しい国土や文化的遺産を守り、これらを未来に活かして、文化及び学術の向上を図り、創造力豊かな国づくりに取り組む。
日本国民は、世界の恒久平和を希求し、国際協調の精神をもって、国際社会の平和と繁栄と安全の実現に向け、不断の努力を続ける。
地球環境は、人類の存続の基盤であり、日本国民は、国際社会と協力しながら、その保全に努め、人間と自然との共生を図る。
日本国民は、これらの理想と目的を達成し、国際社会において、名誉ある地位を占めることを念願する。
この憲法は、日本国の最高法規であり、国民はこれを遵守しなければならない。
現行憲法と改正2案(自民案と読売案)を比較してみてからの感想を記します。
・ 現行憲法には、日本語として間違っているものや意味不明なものがあります。「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して~」は「~の公正と信義『を』 信頼して~」が日本語として正しいとされています。また、米占領軍が指示した英文が元になっているからでしょう、全体的に翻訳調文章の「空疎さ」が目立ちます。
・ 現行憲法の「人間相互の関係を支配する崇高な理想」とは一体何を指すのか、また「政治道徳の法則は、普遍的なものであり」の政治道徳とは何を意味するのか、筆者のような低い頭脳では理解できません。
・ さらに、最も“奇怪”なのは「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」という文章です。わが国周辺を見回して、どこに“平和を愛する諸国民の公正と信義”を見出すことができるのでしょうか。それは、軍拡・覇権・1党独裁の中国(中華人民共和国)ですか、核・ミサイル・独裁の北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)ですか、反日・反米・容共の韓国(大韓民国)ですか、もう、寝ぼけるのもいい加減にしようではありませんか。
・ 読売憲法改正試案の前文は逐条的な表現であり、心に響くものがありません。全面的に直すべきでしょう。
・ 自由民主党の日本国憲法改正草案の前文には格調の高さがいま一つ不足しています。修正すべきだと考えます。
・ 要するに、格調の高い日本語であり、かつ国民にも分かりやすいことが求められるのではないでしょうか。
冒頭に掲げた明治天皇の御製から学ぶべきだと考えます。
世界情勢を鑑みても、今や、憲法改正は待ったなし。全政党が議論を尽くし、早急に国民投票にまで持っていく必要があるのではないでしょうか。
みなさんはどのようにお考えでしょうか。
次回は
時事エッセー
です。
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