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2019年6月 7日 (金)

「貿易戦争」か「冷戦」か … 米中覇権争いをどう見るか!

 693回目のブログです

2019671

“吹きいづる はげしの風に 群雲の はれゆくあとの 月まどかなり”
              内藤政俊(幕末の挙田<ころもた>藩主)

 激しい風が吹きつけて暗雲を取り払った。その後の晴れた空の月の光の何とさわやかなことだろう…。

 幕末の挙田藩(愛知県豊田市)は財政難に苦心。それは賄賂をもらい浪費する家老たちがおり、そのあげく農民に増税しなければならなかった。藩の塾長で正義感の強い竹村梅斎がこの問題に取り組み再建に成功しますが、梅斎は自殺に追い込まれてしまいました。これを惜しみ、また梅斎の功績をたたえて藩主の内藤政俊が詠んだのが上掲の和歌です。

 いよいよ日本列島も梅雨に入りました。5月下旬には気温が30℃~35℃にもなり、今年も異常気象になるのかと心配になってきます。それに応じて、あるいはそれ以上に世界の政治・経済・外交はますます混迷を極めようとしていますが、この局面においては冷静沈着に、ことの本質を見ていく必要がありそうです。

 そこで、今、わが国で「米中貿易戦争」と称されているものが、果たしてそうなのか、あるいは「米中冷戦」ではないのか、ということを考えて見たいと思います。

 まず、簡単に米中の貿易問題が顕著になった平成28年(2016)からを振りかえりましょう。スタートは、2016年のアメリカ合衆国大統領選において。トランプ氏は中国(中華人民共和国)の「膨大な貿易不均衡」を大きな問題として指摘しました。

 平成29年(2017)には、ライトハイザー合衆国通商代表が、中国は、外国企業が中国に進出する際に「技術移転」を強要し、また「不公正な補助金」で輸出を促進するなど、国際貿易体制の脅威になっていると厳しく非難しました。

 これ以後連日の如く、中国との貿易摩擦、戦争、冷戦がクローズアップされてきました。その最たるものが、平成30年(2018))10月のペンス副大統領のハドソン研究所における次のような講演です。

中国の政治及び経済における自由が拡大することを期待して、米国は、中国がアメリカ経済にアクセスすることを許可し、WTOに加盟させた。

しかし、中国は、不適切な貿易慣行・関税・輸入枠があり、通貨操作し、技術を強制移転させ、知的財産を窃盗し、不適切に補助金を配布し、自由で公正な貿易とは相容れない行動を行っている。

中国製造2025を通じて、人工知能などの先端技術の90%を支配するために、アメリカの知的財産をあらゆる手段を講じて取得するよう中国政府が指 示。さらには軍事技術まで取得しようとしている。

南シナ海や尖閣諸島などで軍事力を行使している。

監視社会を構築し、国民の自由と人権を奪っている

キリスト教・チベット仏教・イスラム教などを宗教弾圧している。

借金漬け外交を行い、借金を返せなくなった国から港などを
  取り上げようとしている。

Supermicroスパイチップ埋め込み疑惑、Googleへの検閲システム、
  アメリカでのスパイ活動や宣伝工作。

中間選挙に干渉。

 平成30年(2018)11月には、アメリカは日本などの同盟国に対して「ファーウェイ」の通信機器を使用しないよう要請。日本政府はそれに応諾しました。

 これまでのアメリカによる対中制裁関税は下記の通り。

        (発動日) (対象金額) (関税率)
  第1弾 2018年7月   340億ドル 25%
  第2弾 2018年8月   160億ドル 25%
  第3弾 2018年9月 2,000億ドル 10%(2019/5/9まで)
                              25%(2019/5/10より)
  第4弾 2019年6月末以降
                   3,000億ドル 25%(最大)

 熾烈な駆け引き、争闘が行われていると見なければなりません。それもすべてアメリカが蒔いた種です。アメリカは、たとえ中華人民共和国という共産主義国家であったとしても、種々の暖かい援助を重ねて行けば、アメリカ流の民主主義を受け入れてもらえるとの“幻想”を懐き、中国共産党の建国以来、最先端技術の供与、人材育成への協力、などに注力してきました。

 しかしどうでしょう、アメリカは完全に中国という独裁国家、中華民族国家の真相を読み誤ったのです。中華人民共和国は、今や、世界を二分する勢力、いや世界に冠たる帝国として易々と君臨するまでになっています。アメリカ合衆国が国の総力を挙げて従来中国を蹴落とすことができるかどうか、予断を許さない状況にあると思われます。

 中国には「一山容不下二虎」(1つの山に2頭の虎を収容する空間はない)とか「不共戴天」(同じ天を共に戴くのは敵にほかならない)ということわざがあります。天を戴くのは中国の『皇帝』であり、米国のTOPは単なる一地区の『王』にすぎないと見ている限りは、米中間の争闘は短期間で終わるものではないと思います。アメリカも中国も同じような思考回路を持っていますから、両雄並び立たず、長期戦は必至の予感がします。

 米中の対立は、単なる貿易ではなく、経済、軍事、技術、情報、歴史認識、人権、宗教、など政治全般に関わるものだと考えれば、次のようになるのではないでしょうか。

    ×「米中貿易戦争」
    △「米中冷戦」
    ◎「米中覇権戦争」

 わが国のメディアを見れば、今日現在でも、この米中覇権戦争を単なる「貿易戦争」と表現していますが、これは間違いであり、為にするフェイクニュースではないでしょうか。ペンス副大統領の講演をみても、軍事、技術、政治の領域まで言及しているではありませんか。「覇権戦争」であることは明白。

 そう考えれば、わが国は中国につくのか、米国につくのかの旗幟を鮮明にしなければなりません。わが国は、当然ながら軍事同盟相手の米国を第1とし、ロシアを第2、反日ではあっても韓国を第3の関係先とし、中国に対峙することが求められます。

 しかしながら、先般、自民党の“大”政治家・二階幹事長は大デレゲーションを引きつれる訪中の前に、中国が世界覇権を目指して進める「一帯一路」について「米国の機嫌をうかがいながら日中関係をやっていくのではない。日本は日本として、独自の考えで中国と対応していく。米国から特別な意見があれば承るがそれに従うつもりはない」と言明しました。

 親中・媚中・屈中派二階氏の面目躍如。二階氏はかつて、チャイナの江沢民主席を讃える石碑を全国各地に建立しようとする運動を起こしたとんでもない政治家です。江沢民主席はガチガチの反日派であり、ことあるごとに日本に楯突いた人物。このような人物を尊敬する二階センセイが現在の自民党の幹事長ですから、どう考えれば良いのか、憲法改正も進まないのは、自国よりも他国にシンパシーを感じる政治家が多すぎるからと思えてなりません。

 激動の世界、一層厳しい環境になった令和の幕開け。冷静にものごとを判断したいものです。

 みなさんはどのようにお考えでしょうか。

次回は
時事エッセー
です。

 

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