中国・技術覇権に驀進…パクリの時代は終わった!
701回目のブログです
“異船の よし寄せるとも 君がため 真先に捨てん わが命がも”
松平春嶽(福井藩主・幕末~明治)
外国船(異船・ことぶね)がもし押し寄せたとしても、天皇のため真っ先に自分の命を捨てたいものだ…。
明治維新の偉業から150年、大東亜戦争(第2次世界大戦・太平洋戦争)敗戦から74年、そして、今、米中の熾烈な世界覇権争い、中東の混迷、東アジアの争乱。…これらに対処すべきわが日本の姿勢には、あの幕末維新の壮大な時代精神のかけらも感じられず、社会全体に、72年間一字一句も変えない憲法を墨守しようとする生ぬるい平和論と次代へのチャレンジ精神を欠いた空気が蔓延しているように思われます。
明治以来、また、戦後は特に、わが国の科学技術の発展には目を見張るものがありました。しかし今、その地位も危うくなりかけているのではないかと危惧します。その理由は、中国が技術覇権に向け強烈に驀進していることであり、今までわたし達は、中国の科学技術は「ぱくり」(技術窃盗)だというイメージを持っていましたが、今や、その考えは完全に払拭しなければなりません。中国の科学技術に対する真剣かつ大胆な取り組みをみてみましょう。
平成30年(2018)12月31日の日本経済新聞1面トップに、オランダ学術情報エルゼビアと日経新聞の共同で先端技術の「注目研究テーマランキング」を」発表。
■ 先端技術「注目研究テーマランキング」論文数の国別順位
(カッコ内は論文のシェアー)
中国 米国 日本
1ペロブスカイト 電池 1(41%) 2(22%) 4(7%)
2単原子層 半導体 1(35%) 2(33%) 4(7%)
3ナトリウムイオン電池 電池 1(58%) 2(17%) 4(8%)
4ニッケルや鉄酸化物の触媒 新材料 1(54%) 2(19%) 8(4%)
5ジカウイルス感染症 医療バイオ 3( 9%) 1(40%) 20(1%)
6リチウム硫黄電池 電池 1(60%) 2(24%) 7(3%)
7ゲノム編集 医療バイオ 2(23%) 1(44%) 3(8%)
8有機薄膜太陽電池 電池 1(32%) 2(14%) 6(4%)
9電気二重層コンデンサー 電池 1(65%) 4( 8%) 10(2%)
10免疫療法 医療バイオ 5( 8%) 1(43%) 3(9%)
11位以降には、酸化還元・光触媒・水素発生触媒・核酸を標的にしたがん治療・腸内細菌・カーボン量子ドット・フレキシブル材料・放射化分析・細胞間シグナル伝達・光熱療法・二酸化炭素の有効利用・微生物燃料電池・光電気化学・コンデンサーへの炭素の利用・有機金属構造体・レーザー熔融・バイオ炭・ナノ発電機・リチウムイオン電池・セルロースナノクリスタル と30位まで続きます。(1位のペロブスカイトは次世代太陽電池材料)
研究テーマ30分野の中で、中国は23分野で1位、5分野で2位、と米国を圧倒する力強さを発揮しています。米国の首位は7分野にとどまっています。
中国の凄いところは、中国共産党の一党独裁体制として人民やエリートに睨みを利かせ、国家資本主義体制を融通無碍に活用し中華人持ち前の駆け引き力を発揮し、国際政治、国際経済、国際軍事で優位に立っていることです。
そして、国の基盤として【国家目標】が以下のように明確であることに注目しなければなりません。
①中国は、中華人民共和国の設立から100周年にあたる2049年までに、世界の経済・軍事・政治のリーダーの地位をアメリカから奪取し「世界の盟主」 として君臨することを目指す。
②その根幹に、産業育成政策「中国製造2025」を置く。次世代情報技術や新エネルギー車など10の重点分野と23の品目を設定し、2025年までに「世界の製造強国の仲間入り」することを目指す。重点分野は次の通り。
・次世代情報技術
・高度なデジタル制御の工作機械・ロボット
・航空・宇宙設備
・海洋エンジニアリング・ハイテク船舶
・先端的鉄道設備
・省エネ・新エネ自動車
・電力設備
・農業用機材
・新素材
・バイオ医療・高性能医療器械
ものすごい迫力、力強い国家政策に目をみはります。これに対してアメリカが厳しく指摘しているのは、①「中国製造2025」には地場企業優先、強制技術移転、WTO違反の補助金政策などの不公正な貿易手段がある。②「中国製造2025」には「軍民融合」の政策推進があり、5GやAIはそれに該当し、国家安全上懸念がある。③このまま進むと、中国が米国の産業覇権を奪ってしまう。の3点です。
アメリカが、過去に中国を甘やかして育成してきたことを厳しく反省し、今、猛烈に巻き返しを図っていることは、トランプ大統領の大胆かつ厳しい言動から読みとることができます。
しかし“敵もさるもの引っ掻くもの”中国の力の入れようは半端ではありません。
①中国は、100年の長期戦略で「世界覇権を」狙っており、友好と脅迫の両刀使いで効率の高い戦略を駆使しており、また、独裁強権国家の人権を無視した強みもあります。
②中国の論文数は平成20年(2008)から激増しており、米国と肩を並べるようになってきていますが【研究費】(2016)についても年々激増していることに注目したいと思います。
米国 : 51.1(兆円)
中国 : 45.2
日本 : 18.4
それにしても、日本の研究費の少なさにため息が出ます。
③研究、技術の人材面はどうなっているのでしょうか。文化大革命で農村に下方され勉学の機会を失った大学生が、鄧小平の改革開放によって海外に留学するようになり、ハーバード、MIT、スタンフォードなどの名門校へ入学、PhDを取得し、シリコンバレーの企業に就職、最先端テクノロジーの開発に携わったのです。もちろん、ベンチャー企業を立ち上げたものも多くいます。
彼らは、1990年代末から中国政府の要請に基づき帰国ラッシュとなり、中国国内の研究開発に注力。何と、中国国内では、帰国組も含め、500万人を超える、修士号・博士号の取得者+研究者がおり、この数はさらに増加しているとのことです。
中国(中華人民共和国)の近い将来をどうみればよいのでしょうか。中国は、たとえそれが最初は中国流の合法的な窃盗であったとしても、現在ではかなりハイレベルな技術を有しており、年々その水準が上がってきていることは間違いないと思われます。もう、過去の、国家、社会、学術、技術水準で見るべきではありません。
したがって、知的財産権の侵害さえ阻止すれば中国はつぶれるという考えは幻想であり、中国の先端技術開発が驀進中であることを見れば、その底力が驚異であることを認識しなければなりません。
それにしても、中国の研究・技術開発にかける「膨大な研究費」と「500万人を超える技術研究集団」を見れば大変な果実を得るのではないでしょうか。おそらくは、ノーベル賞受賞者も十年後には多くを数えるのではないかと思います。そして、いつの日か、米国を凌駕するかも知れません。
そして、たしかに、表面ではそれなりの豊かさを作り出すとは思いますが、軍民融合、人民総工作員、人権無視、強権、中華民族主義、など暗闇の中にある1党独裁の『異形の大国』が将来どのようになっていくのでしょうか。考えてもなかなか結論は出そうにもありません。
…どなたか、ご教示願えませんか。
みなさんは、どのようにお考えですか。
次回は
時事エッセー
です。
| 固定リンク
コメント