台湾は「民主主義の要塞」…蔡英文総統の演説を読む!
703回目のブログです
『時事偶感』 杉浦重剛
昨非今是又何論(昨は非とし今は是とす、又何をか論ぜん)
挙世皆知道義尊(世を挙げて皆知る、道義の尊きを)
三復堪吟古人句(三復吟ずるに堪えたり、古人の句)
双懸日月照乾坤(日月を双び懸けて、乾坤を照らす)
杉浦重剛は明治大正時代の教育家であり、晩年は天皇家の御進講に当たる。上掲の漢詩は、「昨日まで非と言っていた者が、今日は是と言っている。こんな節操のない世の中ではどうしようもないではないか。人は皆、道義の大切さを知っているはずなのに。こんな時こそ、古人の句を繰り返し吟ずべきである。“太陽と月を天空に並び懸けてこの国を照らす”という李白の句を。」という意。
暑い盛りですが、お盆も過ぎ、春夏秋冬の四季の廻りもあり、しばらくすれば秋の風も感ずるようになるかも知れません。
しかしながら、爽やかな秋風を感ずることができにくいのが政治の世界の難しさでしょうか。日韓関係のホットなたたかいは、韓国朝鮮の無知と情緒主義と民族特有の事大主義から来るものが大半であり、また、それに迎合するわが国の反日グループ(メディア・知識人・政治家)の存在がことを荒立てていると考えられます。このように、外交問題は、ある意味で内政問題でもあると言わざるを得ません。
さて、台湾はどうなっているのでしょうか。大陸中国から執拗な圧迫を受けつつも、それを強烈にはねのけて行こうとしている蔡総統の、7月13日、米・コロンビア大学で行った演説(要旨)を読んでみましょう。(カリブ海諸国とアメリカ訪問の今回の外遊は『自由、民主主義、持続可能性を求める旅』と名付けられています)
・「台湾が現在直面している試練は、過去数十年間で克服してきたものとは全く異なる。21世紀、全ての民主国家は同じ試練に直面しており、世界中で自由がかつてない脅威に晒されているからだ。
我々は、まさにそれを香港で目撃している。「一国二制度」下での香港の経験は、権威主義と民主主義が決して共存できないことを示しており、権威主義は、機会さえあれば、民主主義のほのかな光をも抹殺しようとするだろう。その過程は、殆どの者が気づきさえしないほど、徐々に、巧妙に進行する。」
・「我々の物語は、価値が重要であることを示している。両岸で文化的、政治的相違は日に日に拡大しており、台湾が言論の自由、人権、法の支配を選べば選ぶほど、権威主義の影響から遠ざかっている。まさに台湾の存在が、民主主義が最も貴重な資産であることを示しているのだ。
我々はそれをどんな犠牲を払ってでも守らなければならない。台湾は日に日に、情報化時代に特有の新たな脅威に直面する最前線となっているが孤独ではない。世界中の国々が今や、権威主義国家による浸透作戦と戦っている。彼らは、民主国家の出版の自由を悪用し、我々が自分たちの政治制度に疑問を持ち、民主主義への信頼を失うように仕向けている。台湾は長年こうしたことと戦ってきたので、世界にその経験を提供し得る。」
・「民主主義は、もう一つの試練にも直面しており、多くの国が、民主主義と経済発展との選択を迫られている。しかし、台湾は、民主主義と経済発展が相互依存の関係にあるだけでなく、決定的に絡み合っていることを、世界に示し続けている。
台湾は、対中依存により両岸問題での自主性が限られていたが、経済を改革し、外国投資を呼び込んで来た。我々は、地域における、ルールに基づく貿易秩序において建設的な役割を果たしている。
世界中の多くの国が債務の罠に陥る中、我々は、持続可能な協力にコミットし、相互発展を強調する。ここでも台湾は、世界中に建設的な発展のモデルを提供している。我々は、侵奪的行為に反対し、誠実で開放的な協力が本物の長期的な結果を生み出していることを証明している。」
・「台湾の生存は、両岸関係にとどまらない影響を持つ。我々はインド太平洋における民主主義の枢要な要塞であり、世界中が我々の民主主義の将来を注視している。」
蔡英文総統の、危機感あふれ、熱情籠った格調高い演説には感動を覚えるとともに、台湾が自由と民主主義の最前線に位置しているとの強い認識を演説から聴き取ることができます。脅威を奮う権威主義国家とは、言うまでもなく大陸中国=中華人民共和国のことですが、権威主義という言葉は穏やかすぎ、実態は1党独裁の強権国家と言うべきではないでしょうか。
今、台湾では2020年の総統選に向けて熾烈な戦いが始まっていますが、争点は、大陸中国との距離感が大きな争点になると見られています。蔡総統は「皆さんに今の香港を見て欲しい。2020年の総統選は臺灣の民主的な生活方式を守る戦いになる」と強調していますので、総統選は、今香港で起こっているデモの行く末―第2の天安門事件<一般市民の虐殺>にまで至るのか、あるいは官憲に適当にあしらわれるのかーと関連つけられ、台湾派vs親中派の厳しい争いとなりそうです。
そうした中、中国が本格的に選挙干渉に乗り出し、台湾メディアへの浸透を強烈に深めてきていると伝えられています。中国資金に支配された台湾の衛星テレビ局CTiTV(中央電視)・その系列の地上波テレビ局CTV(中国電視)・グループの中国時報(新聞)は、中国サイドから連日指示を受けているそうです。
台湾は、これまでのような独自性を保つのか、香港のような道を歩むのか、重大な岐路にあるのではないでしょうか。
ところで、台湾と言えば、朝鮮(韓国・北朝鮮)とは真逆であり、特別な親日国と言われています。例えば、平成23年(2011)東日本大震災での台湾の義捐金は、政府機関、慈善団体、その他を含めて、何と253億円の巨額な金額となっています。「いざという時の友こそ真の友」と言いますから、台湾こそ日本の真の友好国と言わねばなりません。
この厚い義と情にわが国はどのように応えたのでしょうか。
政府(当時民主党)は、震災1ヶ月後、中国、韓国、アメリカなど7ヶ国の新聞に、震災支援(義捐金・派遣)に対する感謝の広告を行いました。ところが、政府としては、中国が約3億円、韓国が約16億円に比して、圧倒する金額157億円(当時)の義援金を贈っていただいた『台湾』の新聞には一切“お礼広告”をしなかったのです。
この最も親日的な国、台湾に対して、菅首相や菅内閣の人は、あまりにも冷淡であり、人間性のかけらもない輩と言っても決して言い過ぎではありません。
菅内閣は、中国に恐れおののき、台湾は中国に属するものとして無視したのでしょうが、それならば、日本赤十字名で広告するなりの手立てはいくらでも考えられたはずです。このことを考えようともしないのは、人間性の欠陥としか言いようがなく、今思い出しても、腹わたが煮えくり返ります。
それに対して、当然、政府よりも良識と人情がある日本人が多くいました。ある日本人女性デザイナーが「台湾の人たちにきちんと感謝の言葉を伝えたい」という『謝謝台湾計画』を立て、Twitterで寄付を呼びかけたのです。一口1,000円、6000人以上の有志から約2,000万円もの寄付金が即座に集まり、5月3日、台湾紙『聯合報』と『自由時報』の2紙に感謝広告が掲載されました。
実際に台湾の新聞に掲載された広告
“ありがとう、台彎”―(日本語)
“わたし達は永遠の友達です……”―(中国語)
同じようなことがメディアにもありました。有力地方紙の京都新聞は、義捐金一覧の中に台湾をすっぽり抜かして報道したのです。中国にへつらっての言論でしょうが、少なくとも、事実だけは報道すべきではなかったでしょうか。事実を報道しないのであれば、捏造・従軍慰安婦報道の朝日と同じと言われても返す言葉がないのではありませんか。
さいごに、台湾にエールをおくりたいと思います。
“ がんばれ、台湾 … 自由と民主主義のために! ”
みなさんは、どのようにお考えですか。
次回は
時事エッセー
です。
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