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2019年9月13日 (金)

米国「株主第一主義」見直しの動き…真の日本型経営へ!

 707回目のブログです

20199131

 “我も人も うそも誠も 隔てなく 照らし貫きける 月のさやけさ”
            貞心尼(良寛の弟子・「はちすの露」)

 自分も人も、偽りも誠も、区別なく照らし貫いている月の光は、何とさわやかなことでしょう…。

 激烈な台風がもたらす被害にはなすすべもありませんが、早く落ち着いた秋の風情を全国的に見せて欲しいとねがうものです。

 秋の風情と言えば、涼やかな風、美しい虫の声、静かに咲く草花、そしてクライマックスは「紅葉」でしょうが、忘れてはいけません。太古より私たちを照らし続けている「お月さん」の清かな姿を。日本の四季を彩る月は、もちろん年中眺められますが、秋に限るのではないでしょうか。特に十五夜の満月には心を奪われます。

 “さやけさ”は、単に月だけがそうあれば良いというものではなく、人間社会もそうなってほしいものです。

 そんな時、米国主要企業の経営者団体が「株主第一主義」を見直す声明を発表しました。

ビジネス・ラウンドテーブル「会社の目的に関する声明」

 個々の会社はそれぞれの自社の会社目的に奉仕する一方、我々はすべてのステークホルダーに対する基礎的な献身を共有する。すなわち我々は以下のことに献身する
  消費者に価値を届けること
  従業員に投資すること
  サプライヤーを公正かつ倫理的に扱うこと
  我々が働くコミュニティを支える
  ・会社に投資し、成長し、革新することを可能にする資本を供給する
   株主にとって長期的な価値を生み出すこと
 すべてのステークホルダーが非常に重要である。我々は会社、コミュニティ及び国家の将来の成功のために、彼ら全員に価値を届けることに献身する。
                           (2019/8/19 一部抜粋)

 ビジネス・ラウンドテーブルはアメリカの主要企業の経営者団体で、今回は、アマゾン、アップル、ゴールドマン・サックスなどのCEO(最高経営責任者・Chief Executive Officer) 180名が署名。(ただしFacebookやAlphabetの名前はない!)

 株主第一主義はノーベル賞経済学者ミルトン・フリードマンが提唱し、永年に亘って米国の企業活動の基礎とされてきました。株主第一主義は株主主権論とも言われ、企業統治のひとつの原理ですが、国家の情勢、社会の趨勢により、今回、見直しに入ったと見るべきでしょうか。

 一方、あくまでもこれは目くらましであり、企業批判、格差批判、社会不安定や分断社会への批判などに対する解決先延ばし策だとの声も聞こえます。株主第一主義を誠実に見直すのかどうか見守りたいと思います。

 今、世界では、富裕層と貧困層の間にはとてつもない格差があります。国際非政府組織オックスファム・インターナショナルは1月21日世界の富豪上位26人が保有する資産の合計は1兆4000億ドル(約153兆円)で、この金額は貧困層38億人の保有資産と同額とする報告書を発表しました。

 ここで、「世界の大富豪ランキング」2019年版を見ます。

 1位 ジェフ・ベゾス     14.0兆円(米国/アマゾン)
 2位 ビル・ゲイツ       10.3兆円(米国/マイクロソフト)
 3位 W・バフェット        8.8兆円(米国/バークシャー・ハサウェイ)
 4位 B・アルノー        8.1兆円(フランス/LVMH)
 5位 C・スリム・ヘル      6.8兆円(メキシコ/通信事業)
 6位 A・オルテガ        6.7兆円(スペイン/インディテックス)
 7位 ラリー・エリソン      6.7兆円(米国/ソフトウエア事業)
 8位 M・ザッカーバーグ  6.7兆円(米国/フェイスブック)
 9位 M・ブルームバーグ 5.9兆円(米国/ブルームバーグ)
10位 ラリー・ペイジ        5.4兆円(米国/グーグル)

 世界の大富豪上位10人で7438億ドル、約80兆円ですから、目が眩みます。この余りにも大きな格差が民主制度を歪なものにしているとの観点から、アメリカの一部の富豪が、2020年大統領選の候補者に対し、不平等や気候変動を改善するため「スーパーリッチ」と呼ばれる超富裕層に富裕税を課す案を支持するよう要請していることに注目したいと思います。

 (超富裕層に対する課税を求めているのは、投資家のジョージ・ソロス、フェイスブックの共同創設者のクリス・ヒューズ、億万長者チャーリー・マンガーの娘、ウォルト・ディズニーの子孫やハイアットホテル・チェーンの複数のオーナーなど、計18人)

 それにしても大したものです。大富豪だとしても、自分の懐に切り口を当てるのですから。彼らは「今日では、裕福なエリート層による事前のサポートや、富裕層の関心無しに、重要な政策が実現することは滅多にない。分裂と不満が不平等によって悪化し、民主主義的制度における不信が高まり、深刻なことにつながる」と述べています。

 わが国は、近年、経済、金融、企業、労働など全てにわたって、アメリカの流儀、やり方、価値観を、いわゆるグロ-バルスタンダードと称して崇め奉り導入してきたことは間違いないと言えるでしょう。

 特に企業の在り方については、特に日本社会の特質を深く考えることもせず、日本型経営はガラパコスだと自虐し、いつの間にかアメリカの企業経営手法がすべて素晴しいものと信じてきました。それで、実業界が生々隆々と発展し、働く人たちも幸せになったかと言えば、そうとは言えません。

 ここにきて、アメリカが方向転換を模索し始め、日本型経営の長所に目をつけたというべきではないでしょうか。

 ステークホルダーは利害関係者と約されています。企業は公器であり、経営者は株主の利益ばかりでなく、他のステークホルダー(従業員・得意先・債権者・下請会社・地域社会など)の利害も勘案して行動すべきであるという考えがステークホルダー論です。この考え方は、歴史的に見ても、今でも、わが国では非常に受け入れやすいのではないかと思います。

 例えば、近江商人には、商売の理念として『三方よし』の精神がありました。

       売り手によし
       買い手によし
        世 間によし

 そして、日本資本主義の父である渋沢栄一は、利潤と道徳を調和させる「義利合一説」を『論語と算盤』で説いています。

 何はともあれ、わが国は日本民族としての特質に合った方策をとらねばならないと思います。例えば、企業の決算を1年ごと、譲っても半年ごとにして、もっと中期、長期の事業戦略を講ずべきこと、…これは以前のブログでも主張しました。

 先日、トランプ大統領が、3ヶ月ごとの決算を改め、半年ごとの決算にすることの検討を側近に指示したと報道されています。

 わが国はアメリカの風潮に弱いですから、アメリカの企業には、ぜひステークホルダー論を展開していただき、残念ながら、日本がそれを真似ることで、より良い社会を築ければそれでも良しとしましょう。本来ならば、日本の方が先達のはずですが…。

 わが国の経営者には、真の日本型経営を目指す勇気が求められます。

 みなさんはどのようにお考えでしょうか。

次回は
時事エッセー
です。

 

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