サラリーマンの給料を上げよ…先進国転落を防げ!
706回目のブログです
“秋吹くは いかなる色の 風ならば 身にしむばかり あはれなるらむ”
和泉式部(平安中期の歌人)
秋に吹く風は、どのようなものであっても、秋の彩を添えて身に沁みるほど風情を感じさせてくれるものよ…。
朝晩はめっきり涼しくなり、いよいよ秋の趣を感じさせるようになりました。夕方から夜に掛けては、松虫、鈴虫、蟋蟀(こおろぎ)などの鳴く声が心地よいハーモニーとなって耳に入ってきます。
虫の声が音楽として聞こえるのは、日本人とポリネシア人だけであり、欧米の人などは雑音として耳に入るそうです。秋を彩るものは、赤とんぼの赤、頭の垂れた稲穂の黄、風になびく薄(すすき)の白、空の青、美味しい香りを漂わす蜜柑畑の黄、ひらひらと落ちるもみじの紅、天空の月を隠す雲の薄鼠、満月の黄金色などが目に沁みますが、耳に聞こえてくるものとしては“柿食えば…”の法隆寺の鐘の音、そしてなによりも虫の鳴く声に優るハーモニーはありません。
静かに四季の秋を楽しむことができる喜びに浸りたいと思う時ではありますが、近隣との外交問題はもとより、国内にも問題は山積みであり、特に働く人々の給料がなかなか上ってこないことに目が向いてしまいます。これは、日本のすべてにおいて生じている歪な現象のひとつとみなすこともできますので、問題点を考えてみます。
■ <働き方改革の死角>日本、続く賃金低迷 97年比 先進国で唯一減
時間あたりでみた日本人の賃金が過去21年間で8%強減り、先進国中で唯一マイナスとなっていることが経済協力開発機構(OECD)の統計で明らか になった。企業が人件費を抑制しているのが主因だが「働けど賃金低迷」の状況が消費をさらに冷え込ませる悪循環を招いている。賃金反転に向けた政策を打ち出せるかが、日本経済の大きな課題として浮上している。
(2019/8/29 東京新聞WEB一部抜粋)
OECDは残業代を含めた全労働者の収入に基づき「一人当たりの賃金」を各国通貨ベースで算出、指数化しているもので、過去20年の推移はグラフをごらんください。
注目すべきポイントは、先進国の中で、唯一減少しているのが「日本」だけであり、マイナス8.2%という惨憺たる事実であることを肝に銘じなければなりません。英国は92%増、米国は81%増。
統計数値というものは慎重に比較しなければなりませんので、物価上昇を差し引いた実質賃金で比較しても、日本はマイナス10%、英国41%増、米国25%増となっています。
(韓国は160%を超える伸びを示していますが、ここ2年の文政権の左翼思想丸出しの無茶な最低賃金大幅アップのため、中小企業の業績が悪化、失業率も改善せず、経済不況の嵐のなかにあります。政策不況と言わざるを得ません。)
本来、経済成長が続けば、物価や賃金も連動して上がるはずですが、なぜ日本だけが下がり続けてきたのでしょうか。そのメカニズムを、賃金問題のエキスパートである小西美術工芸社デービッド・アトキンソン社長(元ゴールドマン・サックス/アナリスト)の意見を援用して下図のように示しています。
なかなか分かりやすい図です。わたしは、確かにこの図の通りだと思いますが、特に、企業が意識的な賃金抑制、非正規社員の増加、研修教育費の削減が賃金低下の大きな要素だと考えています。
さて、戦後の景気循環のなかで、景気拡大局面を一覧しますと…。
「いざなぎ景気」
昭40年(1965)~昭45年(1970) 57ヶ月(4年9ヶ月)
「いざなみ景気」
平14年(2002)~平20年(2008) 73ヶ月(6年1ヶ月)
「アベノミクス(?)景気」
平24年(2012)~
平31年(2019)1月までで74ヶ月(6年2ヶ月)超となる
今はいわゆるアベノミクス景気が続いているようですが、高度成長期と較べると景気拡大の実感は極めて乏しいとは思いませんでしょうか。それはなぜでしょう。
①労働分配率が下がり続けていることです。平成20年(2008)の75%から平成29年(2017)には66%に大幅下落。何かおかしい。
②逆に、企業の内部留保金(利益余剰金)は平成20年(2008)の280兆円から平成29年(2017)には446兆円に大幅増大。さらに、平成30年(2018)には463兆円に増大(9月2日財務省発表)。何かおかしい。
要するに、一応、景気拡大と称する期間が、たとえ弱々しかったにしても、74ヶ月(6年2ヶ月)を超えましたが、その恩恵が一般サラリーマンの懐に届かなかったのは紛れもない事実です。
これでは、消費の拡大もありえず、景気が良いなどとの実感を持つことはできず、『悪循環』に陥ったままと言わざるを得ません。
それでは、どう考えれば良いのかを記しましょう。
・国防を除いて、政府の緊急重大な課題は「賃金アップ」と「少子化対策」の2点だと言う認識に立つ。
・労働分配率アップのために、経営者・労組・学者・専門家などの叡知を結集する場を設け、綜合的な対策を講じ、実行に移す。
・アメリカで裕福な18人が提案している「富裕税」と1800兆円もあるという「個人金融資産」の活用を検討する。
今、日本は先進国から転落する瀬戸際にあります。いつまでも幻想に縋りつくのではなく、現実を直視し、国民が総じて幸せな生活を営んでいくことができるよう、日本の将来について真面目に考えるべきではないでしょうか。
サラリーマンの給料を上げましょう。
みなさんはどのようにお考えでしょうか。
次回は
時事エッセー
です。
| 固定リンク
コメント