“危うい日本の司法”…ゴーン被告逃亡に思う!
724回目のブログです
“ 心だに 誠の道に かなひなば 祈らずとても 神や守らん ”
菅原道真(平安前期・学者/政治家/歌人)
心に誠意を持ち、道理にかなった行動をしていれば、たとえ祈らなくても神は守ってくださるであろう…。
この歌の本意は「己が正しいと信じることを行いなさい」ということであり、常にそのように心がけていれば、そうそう間違いを犯すことはないはずです。…とは言っても、その心がけが緩むこともあり、多くの人は、年の暮れにあたって、過ぎし一年を振り返るとともに新しき年への自戒と希望とを心に秘めたのではないでしょうか。
そんな大晦日にとんでもないニュースが流れて来ました。
■「世界に恥さらした」…出国のゴーン被告、検察の懸念的中 裁判所も動揺
保釈中の日産自動車前会長、カルロス・ゴーン被告が大みそかの前日、レバノンに出国したことが31日、明らかとなり、公判準備を進めていた東京地裁、弁護側、検察側に衝撃が走った。
厳格な条件を提案してゴーン被告の保釈を得た弁護側が「寝耳に水」と言えば、裁判所側も「ショックだ」と驚きを隠せない。証拠隠滅や逃亡の恐れを理由に保釈に強く反対してきた検察側からは「いつか逃亡すると思っていた」との本音も漏れた。
(2019.12.31 産経ニュース一部抜粋)
年末年始の地上波テレビ放送は、他に格好のニュースが少なかったからでしょう、恒例の番組以外は、ゴーン被告の逃亡事件ばかりでした。
まだ、正月ボケは収まっていませんが、いろんな角度から考えてみました。
・まず、経緯をまとめます。ゴーン被告の逃亡は数か月前から入念に計画されたものであり、10数名が逃亡に関与。このうち米警備会社関係者2名は、ゴーン被告の日本脱出に先立ち、ゴーン被告を収容する音響機器用大型ケースを積んだプライベートジェット機でドバイを出発、12月29日午前10時関空に到着。ゴーン被告を大型ケースに潜ませて同日夜日本を出国。トルコへ。トルコ空港は雨の中、車で空港内を移動し、別の民間ジェット旅客機に乗り換え、一路レバノンへ。レバノンでは大統領以下大歓迎という顛末です。
・総費用 逃亡費用 約22億円(2000万ドル)
保釈金没収 15億円
(合計) (37億円)
大富豪のゴーン被告にとっては安いものなのでしょう。
・映画でも見るような逃亡劇ですが、わが日本国の主権が蹂躙されたという深刻な事実を指摘しないわけにはいきません。この点に関して、わが国の反応は…。
森法務大臣:「不法に出国したと考えられ、誠に遺憾」
東京地検 :「犯罪に当たり得る行為であって、誠に遺憾である」
相変わらずの遺憾砲、甘いですね。辞書によれば「遺憾」とは、心残りなこと、残念なこと、そういった気持が残ること、とあります。クレージーキャッツ植木等のヒット曲 “ ♪ 遺憾に存じます ” を思い出させます。もっと厳しい発言があってしかるべきでしょう。また、安倍首相も裁判所も声明を出さないとは、主権国家の意識が全く希薄と言わざるを得ません。次に、ゴーン被告の弁護人の発言をごらんください。
弘中惇一郎弁護士:
「出国手続きは引っかかるけども、逃走罪は刑務所や留置所から逃げる
やつが逃走罪なので、条件に違反して勝手に出たのは逃走の罪ではない
から、犯罪というレベルの話ではない」
無罪判決勝ち取りで有名な弘中弁護士ですから “ ゴーンさん、出国しても逃走罪にならないから考えてみては… ” なんて唆したのではないかと推測される危険な発言ではないでしょうか。こういう弁護士が日本の代表的存在ですから、弁護士業界は異様に偏向していると言わねばなりません。
・地検は、①豊富な資金力と多数の海外拠点を持ち逃亡が容易、②国内外で多様な人脈と大きな影響力を持ち、証拠隠滅の具体的危険性があった、③勾留中に妻などを介して事件関係者への働きかけを企図した…ことからゴーン被告の身柄拘束の必要性があることを地裁に述べましたが、地裁は、昨年4月、海外渡航の禁止、全ての旅券を弁護士に預けることなどを条件にゴーン被告の保釈を許可しました。
弁護士に預けたパスポート
レバノン 1冊
ブラジル 1冊
フランス 2冊
ところが5月に、弁護側は「旅券不携帯で入管難民法違反になる」との奇妙な理屈で、条件変更を地裁に請求、地裁は、フランス旅券1冊を鍵付きケースに入れて携帯し、鍵は弁護団が預かるとの条件で請求を認めたのです。
子供だましですね。プラスティックケースですから金槌で叩けば容易に割れること位は誰でも想像できます。
・「日本の司法の恥さらし」! ゴーン被告の逃亡で日本の刑事司法の恥をさらした裁判所と弁護士の責任は重いと言わねばなりません。検察の予言した通りの逃亡となったのですから、裁判所と弁護士が、もしもゴーン被告の逃亡に加担していないとすれば、間抜け、甘ちゃん、性善説主義者と言うべきでしょうし、もしも加担していたとするならば、筋金入りの反権力、反日左翼と言わねばなりません。
・とりあえず、早急に対処すべきことは
① レバノン国に対して、ゴーン被告の引き渡しを要請すること。
(たとえ、犯罪人引渡き渡し条約を結んでいないにしても)
② 出国はもちろんのこと、あわせて入国も厳格化すること。
③ 出国を幇助した者を探し出す努力をすること。
・仏紙ルモンドは「民主主義国家での裁きを拒み、裁かれる場所をもっとも自分の都合のいいように選ぶ可能性を不当に手に入れた」と前会長の逃亡を批判しています。
・一方、日本の司法システムを批判する論調が支配的なフランスでは、ゴーン前会長の逃亡容認論が根強く、仏紙フィガロによれば、読者アンケートで「ゴーン被告の逃亡は正しかったか」との質問に、77%が正しいと答えています。
・ゴーン被告など欧米の人は、日本の司法を中世のような司法システムだとし「有罪率99%」を非難しますが、これは大いなる誤解です。警察が逮捕して送検した被疑者を検察が起訴する率は63%で、有罪件数を逮捕件数で割ると国際的な平均に近いのです。多くの国では容疑者を起訴することは検察官の義務とされていますが、日本では起訴するかどうかは検察官の裁量にゆだねられているため、確実に有罪になる者しか起訴しないからです(池田信夫氏の論稿より)。ただし、特捜事件の有罪率は99%です。
・先進国のマスコミから日本社会に対してたびたび批判が加えられ、日本文化の特徴や正しいデータに目を向けずに結論を出すことがしばしば見られます。例えば、殺人率を見てみましょう、
【殺人率】(10万人あたりの人数・2017年度)
米国 5.32(人)
カナダ 1.80
フランス 1.27
イギリス 1.20
スウェーデン 1.15
ドイツ 0.98
日本 0.24
この表を見れば、わが国は先進国では殺人が飛びぬけて少ないことがわかります。日本は中世社会ではありません。中世社会などというのはとんでもない言いがかりです。
令和の御代に入った今、わが日本は、正しい情報を大量に多角的に発信し、積極的に他国の誤解を解くことが大切ではないでしょうか。
わたし達は、もっと自信を持とうではありませんか。
みなさんはどのようにお考えでしょうか。
次回は
時事エッセー
です。
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コメント
欧米の社会を支える価値観は多元的に見える。だがローマ帝国建国前の、すなわち欧州に国家が存在しなかった時代から、民族の一員であっても、民族そのものの国家そのものが存在したりしなかったり、数十年単位で国境が時に膨張し時に縮小するなど、有史以来異民族国家と並立した経験のない日本とは異なり、不確定極まる歴史を重ねてきた欧州人は、民族よりも家族さらには個人として生き抜くことが求められてきた。その価値観を突き詰めたのが、キリスト教という一神教である。その点では同じような国家や民族の盛衰の歴史をもつアラブ社会の文化と類似している。正義は勝者にありで、正義が勝つのではない。即ち近代に誕生した国際法は、欧州の生存競争で勝ち抜いた英仏などのいくつかの国の勝者のルールが基本にあり、それは日本など非欧米文化の国々が加入した国際連盟や国際連合あるいはその他の国際的な協議の場でも変わらない。百年過ぎた22世紀ころにはアジア・アフリカ諸国の価値観も欧米と対等に扱われるかもしれないが、21世紀の現状では、近世以降の国家間の生存競争に勝ち抜いてきた欧州のルールが世界を支配している。ゴーン問題にみられる日本国内および諸外国のコメントを見れば、それぞれの国がどの程度欧州型のルール、すなわち勝者が正義を決定する、逃げ得でなく、上手に逃げた者が勝者である、それが資本主義の根底となる、という潜在意識が顕著な国々に見えるのではないか。もちろん、我が国は自国の法制度の公正さ、三権分立の確立した姿などを世界に発信するとともに、二度とこんな醜態を世界に晒すことのないような手立てを政府挙げて行うべきである。いずれにしても、違法な逃亡者に対して我が国に恥ずることは何もない。過去形ではなく、これからの処理をしっかり進めればよい。恥じるべきは、違法な逃亡をしたゴーンの行為を肯定する人たちだ。
投稿: 齋藤仁 | 2020年1月11日 (土) 08時42分