酒蔵めぐり④ …(大阪交野)蔵元・山野酒造!
727回目のブログです
“木の葉なき 空しき枝に 年暮れて また芽ぐむべき 春ぞ近づく”
京極為兼(鎌倉後期・公卿/歌人)
木の葉が落ち尽くした何もない枝に、一年が過ぎ去って、また新しい芽が生まれてくる春が近づいて来ている…。
一見枯れたかのような冬の木だが、再び春が巡ってくればまた新しい生命が萌える、その芽吹きの春もいよいよ近づいて来ていることを期待して詠んだ素晴らしい和歌ではないでしょうか。
睦月(1月)も終わりに近づけば、いよいよ梅の花。しばらくすれば桜の花へと景色は移り変わって行きます。春は何といっても梅と桜が一番似合い、それらが嫌いな日本人は一人もいないのではないでしょうか。
それに加えて、寒い冬の美味しい飲み物は、ずばり日本酒です。国の名前がついたお酒は世界で「日本酒」だけであり、日本人として生まれた以上は、その美味しさを存分に楽しみたいもの。そのためには酒蔵巡りほど素晴らしいものはありません。その土地の本当の歴史を基盤とした雰囲気のある酒蔵を鑑賞し、蔵元の情熱溢れる解説に耳を傾け、その酒蔵で醸されたお酒をゆっくり堪能する、これは人生の“至福”であり、これぞまさしく“醍醐味”と言うべきではないでしょうか。
今回の酒蔵めぐりは4回目。人数は男女合わせて14名。田舎の高校OBの連中ですので気の置けない人達ばかりです。午前中の会合を終えてからの集合でした。
JR東西線北新地駅⇒JR京橋駅・京阪線京橋駅⇒京阪枚方駅⇒京阪交野駅⇒(徒歩)⇒『山野酒造』⇒(徒歩)⇒京阪交野駅⇒京阪枚方駅⇒『火のや 温(ひのやおん)』⇒京阪枚方駅⇒(京阪バス)⇒JR茨木駅
幹事から酒蔵見学の注意事項を前もってメールされました。参考までに。
・納豆やヨーグルトなどの発酵食品は控える。(お酒作りの菌に影響)
・発酵タンクを覗きこむ時は、内部の二酸化炭素を吸わないように。
(酸欠になるため)。又イヤリング・アクセサリー・携帯電話・髪の毛は
中に落とさぬこと。(タンク全部がダメになるため)
・和らぎ水としてペットボトルの水を持っていく。(多種の試飲あり)
・香水や整髪剤は控える。(蔵人の匂いを嗅ぐ仕事の邪魔になるため)
・写真は許可を得て撮る。
大阪府交野市は北河内に位置し、人口は7万6000人、歴史のある市です。交野市駅から山野酒造までは歩いて10数分、その途中にご当地出身の幕内力士「勢」の星取表が掲げられていました。(初場所:西方15枚目8勝7敗)
交野は、古より桜の名所として名を馳せています。
“またや見む 交野の御野の 桜狩り 花の雪散る 春の曙”
藤原俊成(新古今和歌集)
藤原俊成は万葉集の編者である藤原定家の父。上の和歌は人口に膾炙した有名な歌であり、交野の桜は、当時筆頭の歌人が取り上げるほどですから、見事な花を咲かせ歌人の心を捉えたに違いありません。
また、現代でも、美しい詩歌として、寮歌や部歌で歌われています。
【旧制大阪高等学校 端艇部々歌】<端艇とはボートのこと>
(1~6番から一部抜粋)
(一)落花の雪に踏み迷ふ 交野の春の櫻狩り
古き歌人しのびつゝ 春の流れを上るかな
(三)淀の流れよいざさらば 消え且つ結ぶうたかたの
はかなき姿見やりつゝ 彼の海原に漕ぎ出でん
さあ、いよいよ目的の山野酒造につきました。江戸末期より代々受け継がれてきていますが、500石という小規模な酒蔵です。
庭には梅か桜の木がありましたが、暖冬とはいえ、まだ蕾のままでした。到着してから社長の歓迎を受け、直ちにお酒に関するいろいろな説明をしていただきました。
・1合、1升、1斗、1石 … お酒の単位の説明から
・明治初年には全国で10000蔵あったものが、現在は1200蔵に激減。
・昭和41年1000万石だったが、現在は270万石。
・酒造工程を詳しく
・精米歩合:吟醸酒60%以下・大吟醸酒50%以下
・山野酒造の銘柄「片野桜」の蘊蓄を
ザクラと読むのは×、サクラと濁らないで読む
中世以降の文芸で「かたのが原」の用いられる意味の違い
① 交野(かたみに<互いに>狩りに行く野)
② 堅野(堅く狩猟を禁じられた野)
③ 片野(許された者のみが狩猟できる野)
私などの素人にもわかるように説明していただきましたが、社長の熱弁には感心しました。おそらくは「日本酒」愛、自社ブランド「片野桜」愛がほとばしったのではないでしょうか。素晴らしい解説、質疑応答でした。
続いてお酒各種の試飲となりました。待ちに待った至福の時。超辛口から超甘口まで、7~8種のお酒を、小さな利き猪口(見込みの底に蛇の目が印された磁器)に少し入れ、ゆっくりと口に含みます。少しずつですが、結構ほろ酔いになるものです。山野酒造のお酒は、私の口にはどれも合い、本当においしくいただきました。まさに、美味ですね!♪………。(※本当の利き猪口は、小さな利き猪口の4倍もの大きさだそうです)
さらに続いて蔵の見学。生駒山系の豊富な伏流水と関西の上質な酒米、それに加えて杜氏をはじめとする造り手の日本酒、片野桜への愛情とプライド…それらが何となく感じられる酒蔵でした。わたしも仕込み樽を覗かせていただき、ふんわりとしたなかなか佳い香りを感ずることができました。
お土産にお酒と酒粕の詰め合わせをいただきましたが、それとは別に、わたしは友人にも配ろうと美味しいお酒を数本買い求め、山野酒造を去りました。本当に心の通う印象深い酒蔵です。
最後に、社長に紹介していただいたという枚方駅前の居酒屋「火のや 温」で懇親会を行いました。新鮮で乙な料理と美味しいお酒を満喫し、お酒を通した人のつながりが素晴らしいものであることを改めて認識した次第です。
みなさんにも、近間の酒蔵めぐりをお薦めします。
次回は
時事エッセー
です。
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コメント
毎回酒蔵巡り記事、愛読しています。ウーン、美味しそう&楽しそうです! 私の地元千葉県下お気に入り酒蔵は四ヵ所有ります。友人達を誘って行きたいけど、いづれも自動車利用圏内立地。友人は皆酒飲みばかりです。誰か飲まないで酒蔵巡りに付き合ってくれる奇特な運転手(笑)確保にメドつけたいです。
投稿: 野中志郎 | 2020年2月25日 (火) 23時41分