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2020年7月 3日 (金)

医療安全保障を考える!…① 

 745回目のブログです

2020731

   “緑濃き 日かげの山の はるばると おのれまがわず 渡る白鷺”
            徽安門院(南北朝時代・風雅和歌集)

 緑濃い、日の光がさす山は遥々と見渡され、そこに、姿の紛れることなくはっきりと飛んで行く白鷺、清々しい光景だ…。

 まだ梅雨は明けませんが、雨と雨との間の束の間の青空にくっきりとした白鷺の優雅な姿を目にすれば、それはまさに一幅の絵画ともいうべき「美」を感ずる瞬間かも知れません。

 ここ2週間ブログを休載しました間、小宅から5~6分のところにある大学病院に検査・手術のために入院しました。20年ぶりの入院で多少緊張しましたが、順調に経過し無事退院、このようにブログ発信できる普段の状態に戻りました。入院の間感じたことなどを記したいと思います。

 ベッドから眼下には大阪万博記念公園の豊かな緑と日本一の大観覧車、そして万博外周をノンストップで走る多彩な車が一望…これらが梅雨の合間の晴れた青空の下であれば、何ともゆったりとした気分にさせてくれます。また、遠くには、地上300m日本一の超高層ビル「あべのハルカス」も見渡せる絶好のロケーションにある総合病院です。

 特に感心したのが看護師さんの歩く姿です。颯爽と歩いている姿は清々しく、その姿勢も背筋がピンと張っており見事と言わざるを得ません。患者のターラン、ターランと歩くのに比べれば雲泥の差、恥ずかしさを感じるほどです。

 患者は十人十色、各人各様、千差万別ですから、24時間看護する看護師(ほとんどが女性ですが男性も数人いました)の対応は困難を極めると思われるのですが、みなさん、スイスイとこなし、医師とのコミュニケーション、薬剤師との連絡、その他関係者との調整などには全く無駄がなく完璧に機能しているように思えました。

 患者は、一人ひとり異なるうえに、時々刻々変化する存在であり、それに対処するのはなかなか難しいものです。その変化に対応する病院、中でも医師、看護師の力は特に素晴らしく、それはおそらく使命感に由来するものではないでしょうか。いわゆる一般企業の幹部や労務人事の担当者は、異業種である病院の素晴らしい機能性に着目し、自分の会社に取り入れるべきところは取り入れることも考えてもいいのではないかと思った次第です。

 このようなことを考えている時、大変な問題が生じていました。

  本庶氏が小野薬品を提訴 産学連携の契約、工夫必要

2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞した京都大学の本庶佑特別教授は19日、がん免疫薬に関する特許の対価を巡り、小野薬品工業に対し約226億円の分配金などの支払いを求める訴訟を大阪地裁に起こした。両者は共同で特許を取得していた。
裁判の行方は、知的財産に関する大学と企業の契約の仕方や産学連携そのものにも影響を与える可能性がある。
               (6/19日本経済新聞一部抜粋)

 夢の薬・がん免疫治療薬「オブジーボ」の誕生に不可欠の分子を発見しその機能を解明した功績で、本庶教授はノーベル生理学・医学賞を受賞しました。今やオブジーボは世界での売り上げが8000億円/年になるほどまでに成長。

 しかし、オブジーボ特許のロイヤルティをめぐり、本庶教授と小野薬品工業との間に行き違いが生じ、共有特許権を有する本庶教授が小野薬品工業に対し、小野薬品からの支払いが40分の1しか履行されていないとして、残額226億円の支払い(2017~2019年分)を求めたというわけです。

 由々しい問題です。産学連携の在り方にも関係する問題であり、早急に結論を出さなければなりません。これについてのわたしの意見をのべましょう

基本的に「和解」にもっていく。良好な産学連携の姿を求めることが基本であり、裁判長・本庶教授・小野薬品社長が腹を割って双方が納得するまで議をつくすことが肝要。その際、裁判長は「国益のために」自ら積極的な和解を両者に求めるべきではないでしょうか。

本庶教授は、既に、若手研究者の強い思いと努力を後押しするために、ノーベル賞の受賞を記念して『本庶佑有志基金』を設立しており、特許ロイヤルティをこれに充当したい意向のようです。

 又、小野薬品は、過去、300億円を対価ではなく将来の基礎研究や若手研究者の育成に資する趣旨で京都大学への寄付を検討していたとのことですから、決着は付けられるはずです。例えば、30%は対価として、70%は寄付として、そして理事に1名派遣するなど。こうなれば、小野薬品としても、将来の研究の種や有力な若手研究者に触れることが容易になり、名誉、実利の両面において面目が立つのではないでしょうか。

今日、米欧の企業も日本の大学を虎視眈々と狙っており、日本企業の提示する条件が悪ければ成果は海外に流出してしまうことになります。

 業界は異なりますが、トップランナーとして走っていたわが国のエレクトロニクス業界が落ち込んできたのは、自らが有する知的財産を、最新技術を、特異な旧来技術を容易に外国企業に無償譲渡したことがきっかけでした。加えて、競争と協調のバランスを崩したことではないでしょうか。(例えば、ビデオ規格においてベータ・VHSなどの乱立を早期に一本化できなかった「公」感覚の乏しさ)

 要するに、民間人は安全保障の感覚が乏しく、後になって後悔する始末です。製薬業界、創薬業界もそのようにならないことを願うばかりです。

 武漢新型コロナウイルスはいまだに猛威を振るっています。とりあえず一段落した段階で思うことは、国の安全保障は、軍事だけでなく、医療安全保障・食料安全保障・資源安全保障など幅広く構えることが大切だということです。

 ここで独裁国家、中国に目を向けなければなりません。かの国は、独裁政治を自在に発揮、数年前はレアメタルを輸出禁止し先進国を混乱に陥れ、今年は反中の意思を示したオーストラリアから牛肉を輸入禁止、極めつけは、武漢新型コロナウイルス禍においていわゆるマスク外交を展開、世界をあざ笑いました。

 というのは、中国は一番早く武漢新型コロナウイルスの脅威を知悉しており、世界中から各種の医療品を緊急に買い集めまくり、また、自国生産分はたとえ契約分であったとしても強権的に輸出禁止にし、マスク39億枚、防護服3,750万着、人工呼吸器16,000台、新型ウイルス用検査キット284万セットを一帯一路の戦略物資として輸出したのです。まさに、マッチポンプそのもの。とはいうものの、これが独裁国家「悪の中華帝国」のビヘイビアでしょうか。

 このような実態に鑑みれば、医薬品については、安全保障の観点からも見ていく必要があるのではないでしょうか。

 つらつらと考えてみました。

 みなさんはどのようにお考えでしょうか。

次回は
時事エッセー
です。

 

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