日本人の“反中意識”… 何が原因か?
764回目のブログです
“ 秋風に 独り立ちたる 姿かな ”
良寛
秋の風が吹いている。その風に吹かれて独り立ち尽くして、どのように生きていくべきか、世の人のためにどうしたら良いのかと、思い悩んでいると、心まで冷たく感じられる。これが私に与えられた姿なのだろうか…。
良寛は、江戸後期の曹洞宗の僧侶、歌人、漢詩人、書家として歴史上にも有名な存在です。生き難い人々の苦しみに思いを寄せる良寛和尚のこの俳句には、凛としたなかにも悲壮感さえ漂ってきます。
先日、アメリカ大統領選挙が行われ、バイデン民主党前副大統領が勝利宣言を行いましたが、トランプ大統領が敗北宣言を行っていませんので、最終決着にはまだ少し時間がかかりそうです。
バイデン氏は、過去において、親中・反日の姿勢を示してきましたので、新大統領になってからどのような方針を掲げるのか注視したいと思います。
ところで、現在世界で最も重要な課題は、中国とどのように対処していくのかということであり、非常に悩ましい問題です。単純に、経済や領土の問題だけではなく、人権、体制、それに加えて世界の国民感情などの幅広い観点からも見ていく必要がありそうです。
小ブログでも、10月30日、世界先進国の反中意識の高まりについて記しましたが、今回は、それに加えて、日本の「反中意識」について考えてみたいと思います。
まず『第15回日中共同世論調査』(令和元年<2019>)から見ていきましょう。この調査は、日本の「言論NPO」と中国の「中国国際出版集団」(中国共産党中央直属)が平成17年(2005)から毎年行っている調査であり、目的は、日中両国民の相互理解・相互認識の変化を継続的に把握することにあります。
【日中両国民の相手国に対する印象】
(年度抜粋) (2005)(2013)(2019)
日本世論「良い印象」 15.1% 9.6% 15.0%
日本世論「悪い印象」 37.9% 90.1% 84.7%
中国世論「良い印象」 11.6% 5.2% 45.9%
中国世論「悪い印象」 62.9% 92.8% 52.7%
2013年度の数字が両国とも極端な数字になっているのは、前年(2012)9月に尖閣諸島を国有化した翌年の調査によるためであり、尖閣諸島が両国にとって感情を高ぶらせることを明白にしたデータと言えます。
それにしても、日本人が中国に対して、現状でも84.7%が悪い印象を持っていることに注目しなければなりません。
しかし、これは日本だけでなく、自由民主主義の先進国が全て悪印象をもっていることを改めて認識する必要があります。参考に、先々週のブログで記した調査数字を再確認します。(国際世論調査では定評のあるピュー・リサーチ・センターによる先進14ヶ国を対象)
【対中国:否定的・肯定的の意識調査】(2020年)
<否定的> <肯定的>
日本 86(%) 9(%)
スウェーデン 85 14
豪州 81 15
韓国 75 24
デンマーク 75 22
英国 74 22
オランダ 73 25
米国 73 22
カナダ 73 23
ドイツ 71 25
ベルギー 71 24
フランス 70 26
スペイン 63 36
イタリア 62 38
(平均) (74) (23)
日本だけが中国に悪印象を持っているのではく、全ての先進国が悪印象を持っていることは、この一覧を見れば明々白々。
それでは、日中共同世論調査で調査された『相手国に対する印象の理由』を見てみましょう。
【良い印象の理由】(上位3点)
日本世論
・観光客の増加や民間の様々な交流により中国人の存在が身近に
なったから(40.4%)
・中国古来の文化や歴史に関心があるから(30.7%)
・中国経済の発展は著しく、国民の生活水準も向上したから(25.3%)
中国世論
・日本は経済発展を遂げ、国民の生活水準も高いから(53.1%)
・日本の環境は美しく、自然が風光明媚で、温泉等の観光地が
多いから(49.7%)
・日本製品の質は高いから(49.4%)
【良くない印象の理由】(上位3点)
日本世論
・尖閣諸島周辺の日本領海や領空をたびたび侵犯しているから(51.4%)
・共産党の1党支配という政治体制に違和感を覚えるから(43.0%)
・国際的なルールと異なる行動をするから(42.7%)
中国世論
・中国を侵略した歴史についてきちんと謝罪し反省していないから
(60.5%)
・日本が魚釣島及び周辺諸島を「国有化」し、対立を
引き起こしたから(56.9%)
・日本は米国と連携して軍事、経済、イデオロギーなどの面から
中国を包囲しようとしているから(44.1%)
以上を見ると、日本と中国がお互いに好意を持つ関係になることは極めて難しいと思われます。表面的には、民間の交流を進めれば、その範囲内では嫌悪感は薄れ好意を持つようになるかも知れませんが、政治や歴史や領土が絡めば、即座に険悪な間柄になることは、上記の理由を読めば明らかになるのではないでしょうか。
また、わが国が中国の属国として生きることを申し出れば、中国は、日本の過去の気に食わない言動を“お許し”になるかもしれませんが、そんな甘いことは決して期待できません。ウイグルやチベットなどの現状を見れば一目瞭然。苛斂誅求、暴虐の限りを尽くされて日本は滅亡への道を歩むのみではないでしょうか。
日中関係については、よく “日中友好” というキャッチフレーズが唱えられます。日中友好は、①中国に阿ること、②利権がからむこと、を意味し、決して相互の尊重、尊敬を意味するものではなく、薄汚れた言葉になり切りました。真の友好を唱えるのであれば “日中親善” という言葉を使うべきだと考えます。
そうとすれば、わが国は、中国に対しては、毅然と構え、決して「スキ」を見せるべきではありません。今まで自民党政権が放置してきた、領土・海洋・離島の防衛、土地・水源地の中国への売却、留学生、移民などの問題に対しては、一刻も早く諸対策を講ずことが必要です。
もはや、アメリカにおんぶに抱っこされるのではなく、自らを凛とした姿勢で守ることを国家社会のリーダーに望みたいものです。と同時に、国民の自覚も不可欠と言えるのではないでしょうか。
みなさんはどのようにお考えでしょうか。
次回は
時事エッセー
です。
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コメント
日中国交回復後、長らく多数の日本人は日中友好をプラスのイメージで受け入れていた。その理由は二つ、一つはシナ大陸本土から日本への侵略の歴史経験がなく、文化を中心とした平和的な交流が中心であった。7世紀の白村江の戦いも半島諸国と日本との紛争に唐王朝が関わっただけであり、唐王朝が直接日本に侵略をしかけてきたのではなかった、13世紀の元寇もモンゴル王朝が漢民族や朝鮮民族を駆使して日本に襲来したのであり、元寇の主体はモンゴル民族であった、それに対して我が国は明治維新後の近代化の過程で、その文化の送り手側のシナ本土に「手を突っ込んだ」という贖罪意識を多くの日本人が持っていた。「シルクロード」に代表されるNHKや朝日新聞・日経新聞などのメディアが「バラ色の中国」を演出し、日本人のシナへの憧憬心を煽った。それが1949年に建国された中共の実態を見誤らせてきた。だが中共は、歴史的伝統的なシナ大陸の専制国家と似て非なる、明王朝の朱元璋の支配体制よりもさらに徹底した「一党独裁」国家である。。スターリンの冷酷なソビエト体制は倒れたが、習近平の中共体制はスターリン以上の権力を握った独裁国家である。日本より百年遅れて「富国強兵」を実現した中共は、国外に勢力を張り出して中国の影響下に置こうとしていることに諸外国も日本国民もようやく気付いた、というか気づかされたのである。しかし日本だけでなくアジア諸国の政治家も、まだ中国シナと中国政府を同一視して語っている人が多い。ヒエラルキーの支配体制の頂点に中国共産党を置いた東アジア世界を目指しているのが習近平である。中国共産党が本土で権力を失って、アジア支配を目指さない普通の政府がシナ本土に生まれて初めて、東アジアに対等な諸国家が並び立つ国際社会が成立する。明治初期の日本政府はそれを願ったが清王朝も李王朝もそれを嫌った結果が大東亜戦争を招いたのである、結果論だが。
投稿: 齋藤仁 | 2020年11月13日 (金) 08時44分