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2020年11月27日 (金)

米国大統領選に思う!

 766回目のブログです

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 “見渡せば 花も紅葉も なかりけり 浦の苫屋の 秋の夕暮れ”
            藤原定家(鎌倉前期・新古今集)

 見渡すと、美しく咲く花も見事な紅葉も見あたらないことだなあ。浜辺の粗末な漁師の小屋だけが目に映る、なんともわびしい秋の夕暮れであることよ…。

 この歌は、新古今和歌集にある「三夕」(さんせき)と呼ばれる三首の有名な歌のひとつです。他の二首は…。

 “さびしさは その色としも なかりけり 真木立つ山の 秋の夕暮れ”
                       (寂蓮法師)

 “心なき 身にもあはれは 知られけり 鴫立つ沢の 秋の夕暮れ”
                     (西行法師)

 紅葉も今が盛りであり、それなりの華やかさを感じさせますが、秋と言えば、何となくもの悲しさや侘しさを感じてしまうのも人情のしからしむるところかもしれません。

 さて、先日、アメリカ合衆国では4年ごとの大統領選が行われ、共和党のトランプ大統領と民主党のバイデン前副大統領が熾烈な戦いを演じました。選挙結果は、一応バイデン氏が優勢で勝利宣言を発しましたが、トランプ陣営は未だ敗北を認めず、法律で認められている法廷闘争を仕掛けるのではないかと報道されています。

 状況がぐちゃぐちゃになっているようにも窺え、大国であるアメリカ合衆国に、何となく、三夕に歌われている、もの侘しい秋の夕暮れを感じてしまいます…。これは一人私だけの感慨でしょうか。ここで、米大統領選の感想を述べたいと思います。

 日本では、外交と言えばすぐに「二国間関係」ばかりを考えますが、本来、外交の中心は「多国間外交」です。そう考えれば、日本は、海を挟んでの隣国、それも大国である「アメリカ」「中国(中共)」「ロシア」を重要な相手として処しなければなりません。したがって、アメリカの大統領が交代するとなれば、かなりの関心を寄せなければならないのではないでしょうか。

 今、一応、次期大統領に民主党バイデン氏が選ばれるとして、バイデン政権がどんな考えを持っているかは重要な関心事となります。

  日本では、アメリカ共和党は反中、アメリカ民主党は親中だと思われていますが、これは事実ではありません。米中関係を改善したニクソンは共和党、その後の共和党レーガン、ブッシュパパ、ブッシュ子も親中。民主党も、カーター、クリントン、オバマも親中。アメリカは、ニクソン以降、ずっと親中政権がつづいてきました。

  しかし、2015年のAIIB事件以後、やっと中国の脅威を悟り、それ以後オバマ大統領は反中になったのです。遅かりし由良之助というべきでしょうか。その後トランプ大統領は2016年当選後から米中覇権戦争を仕掛けてきています。

  それでは、バイデン氏は中国に対してどのような考えを持っているかを探ってみましょう。バイデン氏は、アイオワ州の支持者集会で「中国はわれわれの競争相手ではない」「中国がわれわれをやっつけるって? いいかげんにしてくれ。彼らは体制内の腐敗にどう対処したらいいのかさえ分かっていないんだ」述べ、米国と対等に渡り合える国とみなしていないことを強調しています。…中国はそんなに柔な共産党独裁国家でしょうか。

  本当にそう考えているのであれば、情報・知財権の窃盗、千人計画、先端技術開発、サイレント・インベージョン(静かなる侵略)、100年マラソン(建国100年で米国を追い越し世界覇権を確立すること)、他民族への暴虐と人権無視、などで中国(中共)からいいようにあしらわれてきているアメリカの実態を真に理解しているとは思えません。

 2016年まで大統領だったオバマ大統領は「南シナ海の緩衝地帯埋め立て」「中国の尖閣諸島進出」「竹島問題の未解決」「拉致問題の不介入」「台湾問題放置」など、東アジアにおけるほとんどの国際問題を放置し、中国のやりたい放題にさせていました。また、2013年に尖閣防空識別圏を中国が勝手に設定したことに対しても型通りの抗議をしたままです。このことは決して忘れるべきではありません。このオバマ大統領時代の副大統領がバイデン氏です。

 人間、ある日突然180度姿勢を変えられるものではなく、バイデン氏が大統領になったら対中国では弱腰外交になると予測されます。なぜそうなるかの理由の一つとして、バイデン氏の次男・ハンター氏の中国ビジネスにおけるスキャンダルがあげられます。中国のエネルギー大手企業「CEFC」とハンター氏との合弁事業における新株10%を、H氏(ハンター)がBig guy(父親バイデン)のために確保するという内容のメールが発覚したのです。また、このメールが本物であることを受信人が名乗り出ました。(ただし、ほとんどのマスコミはスルー)

 バイデン大統領がスキャンダルを抱えれば、どうしても対処策に迫力を欠くことになり、日本としては、アメリカの強腰外交は期待できないと考えざるを得ません。

  11月12日、菅義偉首相はバイデン前副大統領と初の電話会談を行い、バイデン氏が日米安全保障条約第5条を取り上げ、沖縄県・尖閣諸島も適用対象になると明言したことを明らかにしました。首相は記者会見で安堵の表情を見せていましたが、少々甘いのではないかと感じました。今後、中国公船は東シナ海の尖閣周辺や太平洋の小笠原周辺へ一層積極的に我が物顔で遊弋すると考えられ、そうなった時、私たちは、もう、アメリカには従来のように頼れないことを自覚しなければならないのではないでしょうか。

 マスメディアは、よく中立・平等・正義・自由・多様性という言葉を美しく書き立てますが、アメリカのメディアはほとんどが民主党支持であり、今回の大統領選の報道内容にもものすごい偏向が見られます。因みに、ハーバード大学、ショレンスタイン報道・政治・公共政策センターの「トランプ政権の最初の100日間をどう報じたか」の調査による数字をごらんください。

 「CNNとNBCはトランプに否定的なニュースと好意的なニュースの比率は13対1。CBSでは否定的なニュースは90%以上。ニューヨーク・タイムズは87%、ワシントンポストも83%、ウォールストリートジャーナルは70%とボロカスに叩いていたことがわかった」
 「唯一FOXニュースだけが、否定的なニュースが52%で、好意的なニュースが48%だった」(11/12 Diamond online 窪田順生氏論稿より)

 聞きしに勝る異様、異常さ。いかにトランプ嫌い、トランプ憎しであったとしても、トランプ大統領が大量の7100万票を獲得したという事実を直視すれば、メディアとして、それなりの最低限の報道があるはずです。窪田順生氏は『米大統領選の「本当の惨めな敗者」が、トランプではなくマスコミである』と述べています。

 日本のメディアも問題大ありですが、それ以上にアメリカのメディアは腐敗していると考えます。これからは、アメリカメディアの報道はもちろんのこと、それを無批判に垂れ流す日本の報道にも、一定の距離をおかねばならないと思った次第です。

 みなさんはどのようにお考えでしょうか。

次回は
時事エッセー
です。

 

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コメント

勤勉に汗を流して働く製造業を重視する日本人の多くは、極論すれば情報ネットワークだけで巨額の富を生むGAFAの世界を驚愕しながら指をくわえて見てきた。電化製品から半導体にいたるまで製造の世界では先頭を走っていた日本だが、それを用いた情報ネットワークを創造すれば、とは思い至らなかった。その結果、GAFAに自国の富を収奪され、日本国憲法が予期しなかった(?)悪意ある諸国家によるサイバーテロによって、日本の富も機密も奪われる事態に至っている。そして2020年は、一党独裁国家中国のDNAなどの最先端の科学知識を駆使した武漢研究室から放出されたコロナウィルスに始まり、IT先進国で自由と民主主義の国のはずのアメリカが大統領選で登録有権者数よりも多い投票者数という、民主主義を知らない後進国の選挙のような失態を世界に晒して終わる。日本人は諸外国もそこに住む人々も私たちと同じように「基本的には善意に溢れた存在」と思い込んでいるため、ITなどの最先端技術を駆使した反政府反国家的な大事件が起き、陰謀を示唆する証拠がいくつか見つかっても、そんな大それたことをまさか、と考えてしまう。「小さな嘘はバレやすいが、大きな嘘は成功する」。「まさかそんなことを‥」という世界共通の人間の善意の裏を掻く、悪事を働いていると思っていない真の悪人が世界にはいるのである。

投稿: 齋藤仁 | 2020年11月27日 (金) 14時35分

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