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2020年11月 6日 (金)

大阪“都”構想 … 挫折の真因を探る!

 763回目のブログです

 20201161

 “君が住む 宿の梢を ゆくゆくと 隠るるまでに かへり見しはや”
             菅原道真(平安中期・拾遺和歌集)

 あなたが住んでいる家の梢を、太宰府に流される道をたどりながら、見えなくなるまで何度も振り返って見ましたよ…。(道真が大宰府に配流された時に詠んだ歌)

 また、大宰府へ左遷の途上に立ち寄った播磨国明石駅の駅長の同情に対して次の漢詩を与えたと言われています。

  “駅長莫驚時変改 一栄一落是春秋”
  (駅長驚くことなかれ 時の変わり改まるを 一栄一落 これ春秋)

 駅長驚くなかれ 時の変わり改まるのを 栄えるも朽ちるも 春が来て秋へと移り変わると同じようなものだから…。

 毀誉褒貶、栄枯は盛衰、人生いろいろ、世間もいろいろ。ましてや、政治の中においてはなかなか先を読めず、変転も極まりなく、その例を微かに大阪の政争「都構想」にみることができます。

 大阪都構想住民投票は、正式には大阪市を廃止し特別区を設置することについての住民投票と言います。11月1日が投票日でしたが、平成27年(2015)の第1回目と同様に、いずれも僅差「反対多数」という結果となりました。

  【大阪都構想 住民投票結果】(投票率62.35%)

    賛成 : 675,829(票)… <49.4%>
    反対 : 692,996   … <50.6%>
    (差) ( 17,167)

 いわゆる都構想について、反対多数という投票結果になったことについて、現地大阪での肌感覚を含めて、考えてみたいと思います。

都構想反対陣営は、中盤から終盤にかけて、この都構想が成立したら「大阪市が廃止され、大阪市は永遠に戻ってこないのだ…」と大阪市に“ノスタルジー”を感ずるシニア世代に強くアピールしました。

  この影響はかなり深く浸透し、大阪都構想の将来に微かにでも不安を覚える市民は、現状に多少問題があったとしても、現状維持で良いのではないかとの判断をしたものと考えられます。日本人は、欧米人に比べて、新しいものごとを好む人が遺伝的に少ないとも言われます。今回、まさに、現状維持バイアス(未経験なものには心理的抵抗感を持ち、現状が変化しないことに固執してしまうこと)がはっきりとでてきたのではないでしょうか。

  大阪人は金銭に厳しくDRYだと思われがちですが、あにはからんや、意外にWETだったのです。それを読み取った反対陣営の戦術は見事で、成功のひとつの要因です。政治は「理と情」の適度なバランスに立っていることを認識させられました。

都構想の賛成陣営に、大阪維新の会の他に公明党が加わりました。公明党は、前回は反対でしたが、維新の会と裏で選挙協力し、今回180度態度を変え賛成にまわったのです。本来ならば公明党の誇る鉄の結束力が発揮されれば、賛成派の余裕の勝利であったはずです…。

  ところが、出口調査によれば、公明党支持者(≒創価学会)の6割が反対の投票、賛成は何と4割これでは賛成陣営の勝利はおぼつきません。公明党は常勝関西を誇っていましたが、上位下達が全くの不徹底、公明党・創価学会の弱体化の前兆とも読めるのではないでしょうか。

先に大阪人は意外にWETでもあると述べましたが、今回、金銭的には極めてDRYであることが示されました。投票日6日前の10月26日正午、毎日新聞が大スクープ。『大阪市4分割ならコスト218億円増 都構想実現で特別区の収支悪化も 市試算』、朝日新聞・NHKが追随、SNSで大拡散(その証拠に、選挙終盤戦に「コスト」という言葉がキーワードとして大幅に上昇)。コストが218億円/年増加するというこの報道で、賛成・中立から反対 へとの空気が広く醸成されていったように思えます。「コスト報道」で明確に潮目が変わりました。

  賛成派にとっては大きな痛手です後半戦の早いタイミングで出た報道が賛成派にとって最終的な打撃となったことは間違いないでしょう」(大濱崎卓也氏・選挙コンサルタント)

  ところが、このニュースが真っ赤なフェイクニュース、誤報でした。(フェイクニュースはアメリカだけではありません、わが国でも日ごろからシレーッと報道されているのです)

  大阪市財政局長は、翌日の27日機械的試算だと釈明、29日(わずか投票の3日前)には「捏造試算」だったと謝罪。…捏造とは!

  選挙日程から見ても、これは、まさしく役人のクーデターであり、毎日新聞はあきらかに工作機関と言えます。大阪に関係した人ならばこの現象を総括して「大阪市役所・毎日新聞・共産党」の腐臭極まりない悪のトライアングルと見なすのではないでしょうか。「中之島一家」(市役所の所在地:中之島)の亡霊(行政・市議会・組合の三位一体利権体制)が大手を振って復活しそうな予感がします。

  賛成派の大阪維新の会は腸が煮えかえるほど怒りに怒っているでしょうが、所詮は、腐敗した役所と偏向したマスコミと古いイデオロギーの政党がタッグを組んだのであり、考えられる権力争闘の一端だということを認識しなければなりません。…魑魅魍魎の跋扈するところが大阪の政界です。綺麗ごとではことが成就できないのではないでしょうか。

この度の選挙で目を引いたのが、裏はわかりませんが、自民党が独自に反対運動を展開したことです(…こんなことは当然のことではありますが)。前回は、大阪自民党の幹部が何と共産党の選挙カーに乗って演説、不倶戴天の敵・共産党と共闘するという不様な活動に支持者さえドン引きするという体たらくでしたから、まあ、やっと普通の政党に戻りつつあると言えるのではないかと思います。

大阪維新の会は【大阪“都”】を強調しすぎました。首都という名称は日本国天皇陛下のおられる東京だということは常識中の常識であり、大阪都には違和感が残ります。大阪都を標榜するのは真に僭越であり「大大阪府」「大阪副都」「大阪特府」などの名称を掲げるべきであり「大阪」という名称にこだわる市民もそれならば納得したと思います。ちなみに、次のような言葉の方がより実態に近く、真実、よほど良い響きではありませんか。

    『大大阪府構想』(だいおおさかふこうそう)
    『大阪副都構想』(おおさかふくとこうそう)

 “名は体を表す”という格言もあり、掲げる言葉には慎重な吟味を。
 特にわが国は“言霊の幸はふ国”と言われるのですから。

 最後に、市と府の関係は、かなり改善されてきたとは言え、上述したような悪のトライアングルも鎌首を持ち上げる可能性が大いにあります。何はともあれ、大阪市と大阪府の仲の悪さを揶揄してきた「府市合わせ」(不幸せ)という言葉を実質的に無くす努力を傾けてほしいと望みます。

 みなさんはどのようにお考えでしょうか。

次回は
時事エッセー
です。

 

 

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コメント

新たな法制度にもとづいた行政などの組織が固まり、それにもとづいた生活の仕組みが根付くと、国防の危機や経済混乱などの大波乱がない限り、大衆は変革を望まない。特に公務員や公的な仕事を請け負っている地元の中小企業等は「変革によるプラスの正義」より、「変革による個人及び家族の生活不安」のほうが優先するので、変革に反対する絶対数が存在する。ただ大阪のような大都会の場合、「どちらにしようか?」という大阪府市の変革によって生活上の変革を強いられないフリーな人々が多いので、こうした改革運動が一定の支持を得られたのであり、地方都市の場合は様々な行政組織と生活手段が結びついている人々が多いので、平安時の変革はさらに厳しい。平安な時代こそ、次の困難に備えて変革するのが公務員の上に立つ政治家すなわち政党や首長の役目だが。家の改築が必要な年数を経ても、小手先の修理でごまかし続けたあげくに、台風や豪雨で家を失うはめに・・。外敵が攻めてきたら現憲法とともに降伏したらいいと語った護憲派の政治家がいたが、台風が来たら倒壊した家と共に・・。実生活と離反した理想や理屈ばかりを説く政治家や学者の意見をメディアは取り上げ、公務員は現状の組織堅持という本音を隠して沈黙し、フリーに思考できるサラリーマン大衆の考えは投票時に数としてしかメディアに登場しない。実生活を堅持しながら、明日に備えて変革を続ける、健全な国家社会を維持するには、社会のいかなる分野においてもそんな人々の存在が必須なのだが。

投稿: 齋藤仁 | 2020年11月 7日 (土) 09時00分

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