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2021年4月30日 (金)

「原発処理水」…中・韓・日本マスコミによる風評被害!

 788目のブログです

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 “くれなゐの 二尺伸びたる 薔薇の芽の 針やはらかに 春雨のふる”
               正岡子規(明治時代 俳人/歌人)

 二尺(約60センチ)ばかり伸びた薔薇のくれない色の新芽、そのやわらかな棘に細やかに静かに、いま春雨が降り注いでいる…。

 紅色の薔薇の新芽にふりそそぐ春雨、象徴的な春の景色を目に浮かばせる正岡子規の有名な和歌であり、細やかなするどい感性に、子規の俳人、歌人としてのすばらしさを感じざるを得ません。

 さて、今、大阪や東京などでは、コロナ対策の真っただ中。民間企業やお店などに対して、休業要請や時短要請がなされていますが、行政の中途半端と思われる対策で右往左往となっているようです。

 それにつけても、緊急事態宣言は、憲法に定められるべき「国家非常事態宣言」とは大きく異なっており、私権の制限を含む強力な政策実行にはとても追いつかないものです。非常時の憲法を規定しておかなかった報いが今来ているのではないでしょうか。

 そのような観点から見れば、福島の原発処理についても最終的な決着をつけねばならない段階に来ていると考えざるを得ません。

 まず、福島の原発処理にどのような問題があるのでしょうか。大前研一氏はプレジデント4/16で3つの問題点を挙げています。

「廃炉」のむずかしさ
    メルトスルーによる溶け落ちた核燃料の処理
「処理水」の放出先
    放射能汚染水を浄化処理した処理水の放出先の決定
「使用済み核燃料」の最終処分場
    放射能廃棄物(核のゴミ)の地層処分場の決定

 今回のブログでは、②「処理水」の放出について考えて見たいと思います。

 ■ 原発処理水、放出決定に10年 国際基準の7分の1で海に

  政府は13日、首相官邸で東京電力福島第1原子力発電所の廃炉に関する関係閣僚会議を開き、原発敷地内にたまり続ける処理水を海に放出する方針を決めた。処理水はトリチウム(三重水素)を含むが、科学的には安全と専門家が分析し、国内外の原発でも海洋放出している。
              (2021/4/13 日経新聞一部抜粋)

 原発処理水の報道をめぐっては、国内各新聞社&NHKでは表現が著しく異なっていることに注目ください。

 読売新聞 「処理水」(4/7 朝刊1面)
 産経新聞 「処理水」(4/10朝刊1面)
 朝日新聞 「処理済み汚染水」(4/8 朝刊1面)
 ・毎日新聞 「汚染処理水」(4/8 朝刊1面)
 東京新聞 「処理水」(4/10 朝刊1面)と記すも、文面では、
   「汚染水を浄化処理した後の放射性物質トリチウムを含む水」と表現
 ・NHK海外放送 「radioactive water」(放射能で汚染された水)
    放送後クレームを受け「treated water」(処理された水)に変更

 いやあ、見事に2つに分かれました。……読売・産経・日経 vs 朝日・毎日・東京・NHK、「処理水」組 vs「放射能汚染水」組。マスコミの立ち位置をしっかりと目に焼き付けておくことが必要ではないでしょうか。

 メルトスルーした燃料を冷却するための注水や、地下水・雨水が原子炉屋に流れ込むことで発生する放射能汚染水は、今も140トン/日、増加を続けています。それを多核種除去設備(62種類の放射性物質を取り除けるがトリチウムは除去できない)により、浄化処理し、タンクに貯蔵していましたが、もはや限界となり、海洋に放出することになったものです。

 「処理水」には放射性物質トリチウム(三重水素)が含まれるのですが、これは自然界でも生成され、雨水・海水・水道水にも含まれるもの。人体への影響はなく、IAEA(国際原子力機関・International Atomic Energy Agency)も、アメリカも、日本の決定を「世界的な安全基準に沿った手法」だとして全く問題はないと言明しています。ましてや、国際基準の7分の1にまで薄めての放出ですから問題はありません。

 また、諸外国も、もちろん中国や韓国も、トリチウムを含んだ処理水や気体を放出していることを知らなければなりません。一例を挙げましょう(産経4/13)、フランスなどは桁違いの量を放出していることが分かります。

          (施設)    (放出量/ベクレル/年)
 韓国   月城原発           136兆(2016)
 フランス ラ・アーグ再処理施設  1京3778兆(2015)
 英国   セラフィールド再処理施設  1624兆(2015)
 カナダ  ダーリントン原発       495兆(2015)

 ところが、ところが、またしても中国と韓国がイチャモンを付けてきました。とりあえず、韓国当局の主張を聞いてみましょう。

 ・福島汚染水の処理に関する問題は、世界中で恐怖と不安を高めている。
 ・海洋放出される場合は、福島汚染水の管理は日本国内の問題では
  なくなり、海洋環境全体に影響を及ぼす深刻な国際問題になる。
 ・汚染水の海洋放出は、海洋投棄に関するロンドン議定書の目的に
  違反する可能性がある。

 韓国は福島原発の「処理水」を端から「汚染水」と決めつけています。放射性物質がほんの少し含まれていれば汚染水だとするならば、雨水、海水、水道水もすべて放射性物質が含まれており汚染水と言わねばなりません。要は、どの程度含まれているかということであり、そのために、人間の健康に害するかどうかを勘案して国際基準を規定しているのであり、韓国の主張はイチャモン・八つ当たりとしか言いようがありません。

 韓国は、自国も海洋放出しているにもかかわらず、わが国だけに文句をつけ、世界に広報して回っている不思議な国家・民族であり、反日のためなら何でもありの知性の乏しさを示していると言えるでしょう。

 ところが、さすがに真面目な学者は異なった反応を示しました。「韓国原子力学会は、日本が海に放出しようとしているものは『汚染水』ではなく『処理水』だと規定し、韓国政府に放射能の危険を誇張しないよう主張した」のです。(4/28ハンギョレ新聞)

 問題は、処理水の海洋放出により、風評被害が生ずることであり、漁業者の不安を払拭することにあります。たとえ、科学的な根拠によって安全だとしても、日本人は不安民族であり、不安感にこだわりを持つ傾向にあるからです。

 そのためには、メディアが「不安」を煽るのではなく、それを鎮めることに最大限の配慮をすべきではないでしょうか。

 例えば、TVのワイドショーなどでも、ニュース報道において、漁業者の不安の声を伝え『風評が心配されます』という無難なコメントで締めくくりますが、この言い方を止めるべきです。たしかに、風評が心配されるでしょうが、この言葉を朝から晩まで垂れ流すと、国民全般にその言葉が刷り込まれ脳に永らく留まり、結果的に風評被害になることは間違いありません。

 新聞も同じこと。科学的知性にもとづき『汚染水』を止め『処理水』としなければなりません。わが国は「言霊の幸はふ国」(万葉集・柿本人麻呂)ですから、適切な言葉を使うべきであり、臭気芬々としたイデオロギーに寄りかからないようにしなければならないのではないでしょうか。

 みなさんはどのようにお考えでしょうか。

次回は
時事エッセー
です。

 

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コメント

人間は一方で万物の霊長たる理性・知性を有しながら、もう一方では、事実や真実を無視して「信じたいように信じる」偏見に満ちた生き物でもある。最高学府で科学・医学を極めながら、得体のしれない宗教家の妄言を信じ、身も心もさらには親の財産まで投じてしまう。マスメディアの歴史の浅い日本は未だにメディアが真実を報道すると信じている。しかし、近代以降の世界の歴史を見れば、ソ連のプラウダや中共の人民日報のような官製メディアだけでなく、アメリカやイギリスの民間メディアも、国民に真実を伝えることより、国民が信じたがる記事を報道することで世論を誘導してきた。「国民が信じたがっていることを報じる」ことで部数も視聴率も伸びる。ただし、その結果が国家の敗北や政権の崩壊、株価大暴落につながるリスクもある。しかし目先の利を求めるメディアは、彼らの報道が将来どんな問題を引き起こすかなど考えもしない。わが国の場合、朝日新聞がその証左であろう。戦前は鬼畜英米を叫び、戦意高揚と捏造の戦場ルポで部数を伸ばし、戦後はGHQに迎合して反戦平和主義に衣替えして、沖縄戦で、シナ大陸で、朝鮮半島で、ついには東南アジアで、と史実として確証しえないままに捏造した日本軍の犯罪記事を報道し続けた。「香具師」「詐欺師」まがいの新聞社だが、それ以上に無様なのは、戦時中現地で軍にいた経験を持つ多くの日本人が「百人斬り」や「南京大虐殺」などといった荒唐無稽な記事を知っても疑問をもたなかったことだ。自分も自分の連隊の仲間もそんな事件は見たことも聞いたこともない。しかし新聞もテレビもNHKも報道していることだし…。その結果、信じたいことを信じてしまう。メディア側からすれば「信じさせたいことを信じさせる」ことに成功、というわけだ。中国や韓国では政権が今、それをやっている。付言すると、日本のメディアの中国ウィルスに関する日々の報道もその匂いを強く感じるが・・・。

投稿: 齋藤仁 | 2021年4月30日 (金) 09時02分

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