野党支持率はなぜ上がらないのか!
793回目のブログです
“この三朝 あさなあさなを よそほひし 睡蓮の花 今朝はひらかず”
土屋文明(明23~平2年・明大教授・歌人)
この三日ほどの朝ごとに、美しい花を装うように咲かせていた睡蓮が、今朝はもう開こうとしない。束の間の花の命の短いことだ…。
睡蓮は蓮の花に似ています。蓮は水面より上に花が咲きますが、睡蓮は水面に花を咲かせます。また、蓮の葉は丸く切り込みがありませんが、睡蓮には切り込みが入っています。ともに三日咲いて花は散る、…未来の不確実さ、すべてのものが生滅変転する無常を詠った短歌です。
梅雨の最中、コロナ禍は多少落ち着きを見せようとしています。しかしながら、国会での与野党の論戦、駆け引きは、相も変わらず旧態依然、新型コロナウイルス(中国武漢型・イギリス型・南アフリカ型・ブラジル型など)もオリンピック・パラリンピックも、いずれも与野党、政党の駆け引きの材料と化しているようです。
それでは、現在の政党支持率を覗いてみましょう。
【政党支持率】(%)
自民党 33.7
立憲民主党 5.8
共産党 3.1
公明党 2.9
日本維新の会 1.6
国民民主党 0.6
その他 1.2
支持政党なし 43.8
わからない、無回答 7.4
(NHK 令和3年5月7日~9日調査)
政府のコロナ対策は迷走に迷走を続け、菅義偉内閣及び自民党の支持率は低下気味であり、本来ならば、与党、野党が逆転する絶好のチャンスにもかかわらず、一般国民は「与党もどうしようもないが、野党も信用できない」とあきらめムードが横溢しています。
なぜ、野党の支持率が一向に上がらないのでしょうか。この解として、岡本純子コミュニケーション・ストラテジストは次のように述べています。
「コミュニケーションスタイルに問題があります。与党の揚げ足をとって怒りの感情をシャウトし攻撃するのみ。否定・批判偏重の手法は非アカデミックで古臭くて未熟であり、建設的な議論にもならないため人の心も動かせない」(PRESIDENT Online)
立憲民主党や共産党のコミュニケーションスタイルの特徴は、漢検の「今年の漢字一字」(毎年12月京都清水寺で清水寺貫主が揮毫、2020年「密」/2019年「令」)になぞらえれば、それは『怒』と言えるでしょう。
振り返ってみてください。彼らは、昔型労組の「アジ」(扇動・アジテーション)が源流、政権や与党を「こき下ろし」「けなし」「行動を否定、攻撃」「揚げ足」を取り、「シュプレヒコール」を挙げ、常に「抗議」「プロテスト」「対決姿勢」であり、「独善的」「上から目線」…建設的な議論はまずありません。
岡本純子さんは、彼らの「相手の間違いを指摘し、自分の正当性を証明できれば、相手はその非を認め、自分の言うことを聞いてくれるはずだ」という主張を幻想だと言います。そして、人質解放を例にとり、野党に対して、アメリカ連邦捜査局FBIによって開発された「行動変容階段モデル」(科学的な会話手法)による、人質解放に向けたステップを学ぶよう提示しています。
① アクティブ・リスニング
相手の話を聞き、しっかりと聞いているということを相手に
理解してもらう。
② 共感
相手の素性や気持ちを理解する。
③ 相互信頼
相手から信頼を得る。
④ 影響
自分が相手に望む行動を薦める。
⑤ 行動変容
相手が行動を変える。
野党は与党や一般国民との間に「共感」と「相互信頼」を築くことが大切であるにもかかわらず、最高幹部層には、その真逆な言動をする人が多く存在しているのが問題ではないでしょうか。その一人を例に挙げましょう。例の、二番ではダメなんですかで有名な蓮舫立憲民主党代表代行。
【2021年1月27日】参議院予算委員会
(自民党の松本国対委員長代理、公明党の遠山幹事長代理が、緊急
事態宣言発令下に銀座の高級クラブを訪れていた不祥事を討議)
・『あのね。SNSで『国会議員は上級国民』と拡散されているんですよ。えらい迷惑ですよ、私たち』(蓮舫代表代行)
「申し訳ない」と繰り返す菅総理に蓮舫氏は「怒りは感じないのか」と挑発。さらに菅総理の語りに「熱意」が感じ取れないことを指摘し続ける。そして……
・『そんな答弁だから、言葉が伝わらないんです。国民に危機感が伝わらないんですよ。あなたには総理としての自覚や責任感、それを言葉で伝えようとする、そういう思いはあるのですか』(蓮舫代表代行)
これに対して菅総理は……反撃の狼煙!
・『少し失礼じゃないでしょうか』…『私は、少なくとも総理大臣に昨年の9月に就任してから、なんとかこのコロナ対策、1日も早い安心を取り戻したい、という思いで全力で取り組んできた。できることはさせていただいている。私自身は精いっぱい取り組んでおるところであります』(菅総理)
激越な感情に任せた蓮舫女史の一方的な攻撃、それに対する「少し失礼ではないでしょうか」という、菅総理のじんわりと押し殺した反撃のフレーズ。…ついに潮目が変わり、テレビ、新聞、SNSで蓮舫女史は集中砲火を浴び、謝罪ツイートとなりました。またもブーメラン現象が発生、ほんとに懲りない人です。
今、年代別の自民党支持率では「若者」の支持率が断然高いのです。その原因に、麻生太郎財務相は「10代、20代、30代前半は一番新聞を読まない世代。新聞を読まない人達は全部自民党支持だ」と述べています。
確かに、一方的に偏向した新聞情報よりは、SNS情報の方が、情報が豊かで多面的であり、選択肢が多いのは事実であり、それに若者世代が魅力を感じている面があるとは思いますが、私は、別の観点から見てみたいと思います。
今の「若者」たちは、物心がついた頃からコミュニケーション能力が強調されてきた世代です。したがって、学校でも職場でも、同じメンバーであれば、ナチュラルに会話を行い、物事をスムーズに進めていくことを得意にしているのです。
若者世代は、年配世代と異なり、この「コミュ力」(コミュニケーション能力)を価値あるものとして学んできており、逆の「コミュ障」(コミュニケーション障害)を嫌悪していることに留意しなければなりません。
【コミュ力】(コミュニケーション能力)
コミュニケーションの軋轢、行き違い、齟齬とそれが生み出す
気まずい雰囲気を巧妙に避け、会話を円滑に回すこと。
【コミュ障】(コミュニケーション障害)
会話がすれ違ったり、お互いの言い分が感情的に対立したりして、
それを調整するのに骨が折れるような面倒臭い事態を招くこと。
上を見て分かるように、蓮舫女史に代表されるような野党の振る舞いは、言い過ぎかもしれませんが、まさに「コミュ障」(コミュニケーション障害)そのものであり、若者世代からの支持はとうてい覚束ないのではないでしょうか。
時代は変わりました。そうとすれば、野党はもう、金切声を出し、プラカードを掲げて抵抗し、対決あるのみの姿勢ではなく、国民のみならず与党からも共感を呼ぶ「キャッチ・オール・パーティー」(国民各層の支持を受ける政党)を目指さない限り、与党に取って代わることはできないと判断します。
あまりにもやりきれない国会討論を視聴し感じたことを記しました。
みなさんはどのようにお考えでしょうか。
次回は
時事エッセー
です。
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コメント
戦前の与野党は、天皇を元首とする国家の形(国体)を守ること、欧米露からの侵略や侮りを防ぐ国力をもつこと、共産主義思想の浸透を防ぐこと等々、国家の安全に関する問題意識を共有していた。だが戦後の日本は、①国家の安全を揺るがすような新憲法を強いられた(新憲法のもとで竹島を占拠され反撃もしていない)、②新憲法で規定されている天皇の国事行為を拒否して平然としている政党を許している。③米ソ冷戦下でも平然と自由の名のもとにソ連や中共に肩入れした情報を流し続けた朝日新聞や共同通信などの大手メディアが存在してきた。未来の日本という国家の在り方を具体的に描くこともなく、ただ政権を批判すれば、という戦後メディアのもとで生まれたのが野党に属する政治家の大半である。記者や評論家の本質は「野次馬」である。誰かが創造したモノを貶す事なら素人でも馬鹿でもできる。言葉巧みな人なら、それに多少のエスプリを混ぜて賢く見せることもできるだろう。しかし「野次馬」は自分で創ることも演じることもできない。記者や評論家、さらには学者からから政治家に転出した人々の実績がそれを物語る。言葉だけで目立っている野党の政治家を育てたのはメディアである。左派メディアのマリオネット(操り人形)に幻惑されて投票する国民がいれば、彼もマリオネットにされてしまっているということかも。
投稿: 齋藤仁 | 2021年6月11日 (金) 09時08分