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2021年9月17日 (金)

中国「千人計画」の罠 …ノーベル賞候補の頭脳流出!

 806回目ブログです

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 “怠らず 学びおほせて いにしえの 人にはぢざる 人となるらむ”
                (明治天皇御製・明治38年)

 怠らずに学びを成し遂げて古の立派な人に恥ぢない優れた人物になることであろう…。

 明治の教育には、二つの潮流があります。ひとつは「学制」に示される「才芸」第一主義であり、一つは「教育勅語」に結実した「徳義」第一主義です。明治の精神は、この二つの織りなす綾から成り立っていますが、一般的には、才芸は光であり徳義は影でしょうが、本質から言えば、徳義が光であり、才芸は影と言えるのではないでしょうか。

 さて、世の中は、猖獗を極めるコロナウイルスも第5波は一時的にはピークアウトを迎えようとしています。しかしながら、わが国にとって看過できない極めて重大な事態が生じていることに目を向けなければなりません。

  ノーベル賞候補が中国で研究 日本の「頭脳」流出懸念

 光を当てるだけで化学反応を促進する「光触媒」を発見し、ノーベル賞候補に名前が挙がる藤嶋昭氏(東京理科大元学長、東京大特別栄誉教授)が、中国の上海理工大で研究を進めることが3日、分かった。
 藤嶋氏は「人類のために研究するだけ」と説明しているが、中国は外国の優秀な人材の引き抜きを積極的に進めており、日本の「頭脳」が中国へ流出する懸念も高まっている。
              (9月3日 読売新聞 共同上海)

 驚愕のニュース! いよいよ、わが国の科学技術が中華人民共和国に取り込まれてしまったとしか思えないニュースであり、藤嶋昭氏と言えば、東京理科大元学長にして「光触媒」の発見でノーベル賞を取りざたされている世界的に著名な学者です。

 小ブログで、令和2年3月6日、中国「知財」躍進の闇に注視する例として、中国「千人計画」のアメリカでの実例を取り上げましたが、まさかそれが、わが国の足元に秘かに、且つ、大胆に忍び寄っているとは気づきませんでした。そこで、これに関連した書物がつい先日発行されましたのでご紹介したいと思います。

   書 名 『中国 「見えない侵略」 を可視化する』
   著 者 読売新聞取材班
   出版社 新潮社
   価 格 780円+税
   書 式 新潮新書(242頁)
   発行日 2021年8月20日

 日本が中国から目に見えない侵略を受けていることを分かりやすい実例でもって説明しています。帯封には…。

  経済安全保障の危機を総力取材
    「千人計画」の罠
    殺戮ドローン
    留学生が知的財産収集
    日本学術会議の「軍事アレルギー」

 とあり、気づいたところを抜粋したいと思います。

 千人計画には、創造(学術分野)・創業(ビジネス分野)・青年(年齢制限)・外専(外国人研究者の招致)の4種類があります。
 日本人研究者として、44人が参加、5年で2億円の研究費、プラス中国科学技術費、秘書、永住権、などなど高額な処遇。(…読売の調査だけですでに44人

 (参考:アメリカで逮捕起訴されたハーバード大教授の処遇は、毎月給料5万ドル、年間生活費15万ドル、研究所設立費150万ドル、米中往復交通費<ビジネスクラス航空券>他であり、教授が中国から求められたのは、米国の技術をスパイせよとのこと)

 国防7校にも8人の日本人。国防7校とは、北京航空航天大、北京理工大、ハルピン工業大、ハルピン工程大、南京航空航天大、南京理工大、西北工業大、

 中国国務院が作成した、千人計画の参加者が中国側とかわす契約書のひな型には、給与、待遇に加え、『知的財産の所有権に関する条項』『秘密保持条項』が含まれていると言います。

 民生でも、軍事でも活用できる技術を「デュアルユース技術」と呼び、それらを明確に区別することは現実的に不可能です。今、注目のワクチンでも、AIドローンでも、民生と軍用が重なりあっていることは誰でも理解できるのではないでしょうか。

 アメリカは、米国の安全保障にとって重要と見られる「新興・基盤的技術」について包括的な規制を行うことを定めました。対象分野は次の通りです。

 【新興技術】
   ① バイオテクノロジー
   ② AI・機械学習
   ③ 全地球測位システム(GPS)
   ④ コンピューターの演算処理を担う半導体チップなどの
     マイクロプロセッサー技術
   ⑤ 先進コンピューティング技術
   ⑥ デーダ解析技術
   ⑦ 量子・量子センシング(計測)技術
   ⑧ 輸送関連技術
   ⑨ 3Dプリンターのような付加製造技術
   ⑩ ロボット工学
   ⑪ 脳と機械をつなぐブレイン・マシン・インターフェース
   ⑫ 極超音速
   ⑬ 先端材料
   ⑭ 先進監視技術

 デュアルユース技術について最も進んだ認識を持っているのは中国と言っても過言ではありません。なぜならば、中国は、民間の先端技術を活用して軍備増強を図る『軍民融合』を国家戦略に掲げていますから。それに比し、わが国には学術会議という軍事アレルギー組織が厳然と屹立したままであり、大学は、防衛省・自衛隊の研究依頼に応ずることが出来ません。このままでは世界の技術水準に切望的に後れを取ることになるのではないでしょうか。

 先端技術で中国軍が米軍をリード。

 開戦4日で尖閣奪取のシナリオも。

 「マスク」「アプリ」中国依存のリスク。

 中国人留学生は「学術スパイ」であり、孔子学院は「トロイの木馬」

  不当な手段による知的財産権の損害額を、FBIは年間2250億ドル~6000億ドル(約24兆7500億円~約66兆円)と推計しています。驚くべき巨額な数値です。

 最後に、中国軍戦略家の言葉が紹介されています「戦わずして勝つとは、まったく戦わないことを意味するのではない。政治戦、経済戦、科学・技術戦、外交戦、などなど、戦わなければならない戦争は数々ある。これを一言でまとめれば「総合国力戦」である」と。

 これに対し、わが国はどうなっているでしょうか。例えば「軍事目的のための科学研究を行わない」という方針を頑なに守るだけでは、わが国の安全保障や技術水準が保たれるとは思えません。これでは余りにも不誠実、能天気の誹りを免れないのではないでしょうか。

 わたし達国民も、厳しい国際情勢に鑑みて、いま一度、自らの内面に誠実に向き合う必要があると考えます。

 さいごに中国「見えない侵略」を可視化する』(新潮新書)を推薦します。

 みなさんは、どのようにお考えでしょうか。

次回は
時事エッセー
です。

 

 

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コメント

国家間・民族間の生存競争は戦争に至ろうと至るまいと歴史を鑑みれば残念ながら自然の営み=常態といえよう。戦国時代の日本人なら、それを当然のことと理解できたが、終戦後の教育を受けた日本人は「平和こそ人間社会の常態」という観念に憑依され、自分たちが戦争を始めなければこの世に戦争は起きない、という観念平和主義者に満ち溢れている。まさかそこまで幼稚な大人に溢れた日本国になるとは占領憲法を作ったアメリカ政府も予想していなかっただろう。国家・民族間の生存競争は永遠に続く、平和とは競争相手との力の均衡状態をいう、等々が日本人の常識にならない限り、これからも様々な業種で日本国・日本人を裏切る著名人が出てくる可能性は高い。漢民族が初めて統一国家をつくった秦国から二千年余り、東アジア大陸に覇権をもった国はすべて専制国家であり、日本の江戸時代のような地方文化が咲き乱れた権力分散型の封建時代もない。そして21世紀の今、先端情報技術を国家が独占して国民の思想まで監視する一党独裁専制社会主義の中国が誕生している。自国型以外の文化をすべて排して国家や民族をマウンティングする異形の国に韓国など東アジア大陸の隣接国は慣れているだろうが、「日出る処」の日本国民にそれができるのか、空理空論の平和論よりもまず「日本」という国の何が私たちにとって捨てがたい文化なのか本気で考えて、専制国家に服従するのか、それとも「日出る処の民」として生きるのか。幕末の日本国民も、第二次世界大戦時の日本国民も、自身と国の将来を真剣に考えざるを得ない時代を生きたが、激増した軍事力を行使する誘惑に駆られている中国を前にした21世紀の今もまたそういう国難の時を迎えていると覚悟すべきだろう。

投稿: 齋藤仁 | 2021年9月17日 (金) 15時15分

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