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2021年9月 3日 (金)

アフガン撤退は他人事ではない…日本の安全保障を考える!

 804回目ブログです

2021931

 “やさしいね 陽のむらさきに 透けて咲く 去年の秋を 知らぬコスモス”
               俵万智(歌集「サラダ記念日日記」)

 なんて優しいコスモスの花なのでしょう。秋の日差しを、紫色のそのやわらかな花びらに明るく透かして、今を可憐に咲いている。変わらない可憐さで同じようにコスモスが咲いていた、去年の秋などを知らずに…。

 9月に入ると、夏の空は知らぬ間に一変しており、涼やかな空気と共に透き通った青い空を誇らしげに見せてくれています。

 そんな中にも、コロナ禍は衰えることを知らず、全体としては何か不安な様相を呈していますが、わが国をとりまく課題は、コロナ問題だけではなく、東アジア問題、経済問題など数々の難題が山積しているのではないでしょうか。

 米軍のアフガン撤退で大変な問題が生じています。予想外のタリバン制圧により、米国の撤退がスムーズいかなくなり、大混乱に巻き込まれているようです。わが国も自衛隊機を派遣しましたが、何か曰くがあるように思えてなりません。

  自衛隊機でアフガンから日本人1人退避 共同通信の通信員

 イスラム主義組織タリバンが実権を掌握したアフガニスタンから27日、日本人1人が航空自衛隊の輸送機で退避し、隣国パキスタンの首都イスラマバードの空港に到着した。アフガンの首都カブールの空港は、米軍が管制を掌握している一方、周辺では自爆テロもあり不安定な状態。政府は、出国を希望しないごく少数の邦人が、アフガンに残っていると明らかにした。
              (2021/8/27 毎日新聞一部抜粋)

 あの大型航空自衛隊機でわずか1名のみ救出とは摩訶不思議なこともあるものかと思いましたが、どうにも違和感を拭えません。マスメディアも明快に報道していませんので時系列で追って見ました。

 8/12 日本大使館の働きかけがあったのでしょう、日本大使館の大使館12名全員が英国空軍機の支援によってカブールから脱出へ。

 8/22 NSC(国家安全保障会議 National Security Council)が自衛隊機の派遣を決定。(各国も脱出のために空軍機の派遣を実施)

 8/25 自衛隊機到着

 8/26 アフガン「イスラム国」自爆テロ

 8/27 自衛隊機で運べたのは、1名(共同通信の通信員)と、米国から要請を受けたアフガン人の合計15人に留まった。

 アフガニスタン日本国大使館は、現地の治安状況の急速な悪化を受けて、8月15日をもって一時閉館し、トルコのイスタンブールに臨時事務所を設置して当座の業務を継続、9月1日より、在アフガン大使館の臨時事務所をカタールのド-ハに移転。

 したがって、自衛隊機がアフガンへ到着した時は、日本大使館は「もぬけの殻」。何と、日本大使館員は既に8月12日脱出していたのです。

  その時(8/12)同時に、政府機関の人、在留日本人、アフガン人現地スタッフも一緒に脱出していれば何の問題ないのですが、… 政府・外務省には口を濁さず明快に説明してほしいものです。

  もし、その時、日本大使館員だけが脱出していたとすれば、外務省には倫理も道徳も何もないことになります。日本人大使館員が真っ先に逃げたとすれば言語道断と言わねばなりません。

 そのそも、自衛隊機の派遣は、米国のアフガン撤収の伴う日本の退避作戦を貫徹することでしたが、結果は1人プラス14人、合計15人に留まりました。政治は結果論、初期の目的を達したとは到底言えません。政府の自衛隊機派遣が1~2日早ければ、段取りの時間は十分あったわけですから、対応できたと言われています。政府中枢のモタモタした、判断力、常識力に多いなる疑問符をつけたいと思います。取り残された人がまだ500名近くいることを肝に銘じてほしいと思います。

 さて、コロナだけが政治ではありません。アメリカの基本的な姿勢について、バイデン大統領の演説から、考えをめぐらせてみたいと思います。重要な点です。

 【バイデン大統領の演説】

 8/16 BBC NEWS 武装勢力タリバンがアフガニスタンを瞬く間に制圧した「アフガン情勢」について演説。

 アフガニスタンの政治指導者たちは国を投げ出して逃亡した。アフガニスタンの軍は、時には戦おうともしないまま、崩壊した。

 『アフガニスタン軍が自ら戦おうとしない戦争で、アメリカの兵士が戦って死ぬことはできないし、そうするべきではない。

 アメリカは、2001年10月、いわゆる9月11日の米同時多発テロ受け、アフガニスタン空爆を開始。以来20年の長きに亘ってアフガニスタンを制圧してきました。

 したがって、『米国の指導者の本音』がこのバイデン大統領の演説に明白表れていると考えるべきではないでしょうか。即ち。

    アメリカは、自国を守る意思のない国を助けない

ということです。

 たとえば、中華人民共和国(中共)が尖閣諸島に侵攻してきた時、日本政府はバイデン大統領に泣きつき「自米安保を発動してほしい!」、バイデン大統領は「自衛隊は戦わないのか!」、そして、ぴしゃりと引導を渡すでしょう。

 『アメリカ軍部隊は、日本の自衛隊が自分たちのために戦おうと
  しない戦争で、戦って死ぬことはできないし、そうすべきでもない。』

 尖閣だけではありません。わたし達は、日本自身が日本を守る気概を持たなければ、誰も守ってくれはしないことを肝に銘じておかねばなりません。バイデン大統領の演説から「アメリカの真意・本音」がはっきりと見えてきました。

 “ 日本の覚悟 ” が求められているのではないでしょうか。

 みなさんは、どのようにお考えでしょうか。

次回は
時事エッセー
です。

 

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コメント

今回に限らず戦後の日本外交は「中途半端を売りとしているのか、善意の限りを尽くした末の水の泡を良しとしているのか」、いずれにしても国民は呆れ、世界はあざ笑うというような外交の連続が目につく。問題の根源が終戦時のアメリカ政府の対日政策であり、その核に占領憲法があり、国際法違反の憲法押し付けを美化してきた戦後の学者やメディアにある。その結果、国政を担う政治家は次の選挙を考えてメディアの機嫌を窺わなければ事を進められず、「武器を持たない平和時の戦士たるべき」ことを忘れた外交官は国益よりも対象国の機嫌取りに終始してきた。「人命は地球より重い」と語って多額の身代金を与えたうえに北朝鮮まで送り届けた日本赤軍のハイジャック事件や、130億ドルを超える膨大な金を拠出しながら感謝もされなかったイラク戦争などを思えば、今回のアフガニスタンの日本大使館の職員の行動は不思議ではない。アフガニスタンに日本が投じてきた善意のお金も何もかも「泡」となって消えたが、大使館職員の命は守られた。それを知って政府や外務省の官僚たちは喜び安堵したのか、それとも悲憤慷慨したのか。自国の伝統文化にプライドを持たない、自国民の生命財産を守ることに命をかけない外交官や政治家の存在が尖閣諸島だけでなく、日本国そのものを危うくしている。

投稿: 齋藤仁 | 2021年9月 3日 (金) 11時14分

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