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2021年11月26日 (金)

“日本財政は破綻寸前”…これは、ウソ・フィエクだ!

 816回目ブログです

202111292
     梅田雲浜の手紙

  “君が代を おもふ心の 一筋に 我が身ありとも 思はざりけり”
              梅田雲浜(幕末/勤王の儒学者

 天皇の世を思う心の持ち主のひとりに、自分が数えられるとは思わなかった…。

 梅田雲浜は「安政の大獄」の最初の犠牲者。辞世の歌は、謙遜の気持ちをあらわしているようでもあり、不明を恥じているかのようでもあります。

 さて、いよいよ予算のシーズンに突入。岸田内閣は、11/19、臨時閣議で、新型コロナウイルス禍の長期化などに対応する新たな経済対策を決定しました。国・地方の歳出と財政投融資をあわせた財政支出は55.7兆円、過去最大を誇っています。

 概要は、①新型コロナ感染症の拡大防止22.1兆円、②社会経済活動の再開など9.2兆円、③「新しい資本主義」起動19.8兆円、④防災・減災、国土強靭化4.6兆円、となっています。

 印象としては、欧米の意欲的な経済対策、特にアメリカのそれに比較して余りにも小さく、too smallの感をいだきます。

 ましてや、いつも指摘される「真水」(実質の投入金額)はいくらなのかということであり、積み残しなどで膨らませた額を除外すれば遥かに小さな数値になるのではないかと危惧します。わが国は、誰が見ても過剰なコロナ対策を講じてきたのであり、それによる経済の毀損は半端ではなく、大型で積極的な経済対策が求められていると言っても過言ではありません。

 なぜこの段に及んでも、中途半端な処方箋しか出さないのかと考えて見れば、解散総選挙を控えて各党が現金給付を公約に掲げる「バラマキ合戦」に突き進む状況を待っていたかのように注目を浴びたのが、文藝春秋11月号に掲載された事務次官、モノ申す 「このままでは国家は破綻する」”論稿に至ります。現役の財務省事務次官・矢野康治氏による異例の寄稿です。

 矢野次官の論には、日経新聞、朝日新聞、財界人、経済学者の多くが同調していますが、果してそれが正しいのかどうか考えて見たいと思います。

 矢野次官の論に対して不快感を示したのは自民党の高市政務会長です。財務省に即座に反論する見識と勇気には敬意を表したいものです。

  「バラマキ合戦」という指摘は大変失礼ないい方だ。
  日本の国債は、自国通貨建てだからデフォルトは起こらない。

 矢野次官は、「国債=借金」のドグマを無条件に信じているようですが、これは間違いです。「国にとって借金(負債)」は「国債の保有者・投資家側から見れば国債は大切な(資産)」となります。ところが、矢野氏の論稿では、「借金」という観点からその大きさについてだけ警鐘を鳴らしており、日本国債が「誰の資産になっているのか」という資産的観点からの言及は一切ないのです。資産と負債の両面から見ていく、すなわち、バランスシート(B/S・貸借対照表)で見ていくのが会計の原則であり、常識ではないでしょうか。

 「財政の健全性をより正確に測るには、政府の純資産(総資産から総負債を引いたもの)によって測られるべきなのである。日本の純資産はほとんどゼロであり、他国と比較しても健全と言える」(浜田宏一/イェール大学名誉教授)

 「民間で例えて言えば、日本は多くのローンを借りて土地などの資産を多く持つお金持ちというにすぎず、「日本政府は破産寸前」とは言えない。「タイタニック号が氷山に向かって突進しているようなもの」などと、矢野次官は日本の財政状況を例えたが、誇大妄想の限りである」(同上)

 ・かつて、財務省は、平成14年(2002)「外国格付け会社宛意見書要旨」の中で、「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」と、冒頭で厳しい発言をしています。ところが、今回の矢野次官の寄稿では「日本政府は破産寸前」と言います。何がどうなっているのか、矢野氏は勝手な思い込みで、無理筋の発言をしているように思えてなりません。

 矢野次官は、わが国の財政赤字(一般政府債務残高/GDP)は256.2%であり、どの先進国よりも劣悪な状態になっていると指摘しています。(ドイツは68.9%、英国は103.7%、米国は127.1%)。しかしながら、資産の観点からは全く言及はありません。完全に片落ちの議論と言わなければならないのではないでしょうか。

 日本国債の発行残高は2021年6月末で1223兆円ですが、特に期間が1年未満と短い国庫短期証券を除いた国債1056兆円に限ると、海外投資家の保有比率は7.2%に過ぎず、92.8%は「国内投資家の資産」になっていることを認識しなければなりません。

 この「国の借金」のほとんどを国内投資家の資金で賄えていることが、世界最大の借金大国と言われる日本が破綻していない大きな理由です。

 さて、わが国は世界に先駆けて1990年代から、長期停滞に陥っています。一般的に言って、不況対策としては、積極財政、金融緩和、構造改革が上げられますが、長期停滞の原因は、何と言っても「需要不足」にあります。

 長期政権だった安倍内閣は、大胆な金融政策(デフレ脱却を目指す)機動的な財政出動(大規模な予算組み)民間投資を喚起する成長戦略、という3本の矢によって、日本経済を立て直そうとしました。そして、大胆な金融政策は実行しましたが、積極財政、成長戦略は全くの生煮えに終わり、デフレの脱却、需要不足の解消には至らず、経済は軌道に乗らず、先進国から中進国への厳しい道を歩まんとしている状況ではないでしょうか。

 そうだとすれば、今、あらためて基本的な経済政策に立ち返えることが肝要であり、需要不足を克服する積極財政に舵を取ることが求められているのではないでしょうか

 そう考えれば、岸田政権の経済政策は、あまりにもtoo small過ぎて、話になりません。大胆な経済政策を実行しなければ日本が危ない! さいごに、高名な経済学者・浜田宏一先生の言葉を引用したいと思います。

 【将来のインフラを破壊する】

 「仮に財務省の「バラマキ」批判の主張が通って、コロナに苦しむ国民への支出を差し控えたとしよう。さらに、財務省が望むとおり必要な財政支出を控えたり、増税したりすれば、国民はますます子どもを産まなくなり、将来の生産力を担う人材教育の投資は縮小される。財務省の主張は、将来の国民全体のインフラを破壊する。救済による国債残高が増加しても、政府と民間の貸し借り関係では、将来の所得分配に影響するだけである」
       (浜田宏一イェール大学名誉教授・12/3プレジデント)

 みなさんは、どのようにお考えでしょうか。

次回は
時事エッセー
です。

 

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コメント

齋藤さんのご指摘の通りだと思います。わが国の2大権威において、基本的な思想が間違っていることが問題ではないでしょうか。

① 朝日新聞においては、親中・親韓・親北および反日(自虐)の思想によって、日本の国益を大きく毀損してきていること。…これは私益だ!

② 財務省においては、バランスシートを無視した基本思想によって国家の進展を妨げていること。…これも、省益を守ろうとする私益だ! 

以上です。 

投稿: のんちゃん | 2021年11月26日 (金) 10時44分

わが国はバブル崩壊後の30年間、国民の実感として物価は安定していたが、所得も安定し、というより停滞したままである。バブル崩壊期に就職した人が退職が近づき、そろそろ第二の人生を、と考える、一つの世代・一つの時代をつくる長さである。まさに平成の時代は戦後の残滓を祓い清める決断力もなければ、経済を再生させる大改革もできなかった。昭和の人々が築いた膨大な国富からの配当で暮らしてきた30年と揶揄されても仕方がないだろう。ひたすら隣国の大国化の支援に政界もメディア界もこぞって支援してきた時代ともいえようか。その結果、令和の日本に何をもたらすことができたのか?平成期に活躍していた政治家・官僚・マスコミ人は一体将来の日本像をどう描いていたのだろうか?「失われた30年」に日本は、個人給与でも企業規模・利益においてもアメリカに大きく差をつけられている。差の広がった原因はいくつもあるだろうが、少なくとも平成の30年間の日本の経済政策がGOODでもBETTERでもなかったことは確かだ。国の内外の政治に関しては朝日新聞の主張・提言と反対の政策をとることが日本の安全の第一条件であるように、経済に関しては財務官僚の提言・助言を無視することが日本経済の再生への第一歩と多くの国民が思うようになる、すでになっているかもしれない。

投稿: 齋藤仁 | 2021年11月26日 (金) 08時54分

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