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2021年12月24日 (金)

国の基幹統計でまたも“偽装”…統計の信頼性を確立せよ!

 820回目ブログです

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 “雪ふりて 年の暮れぬる 時にこそ つひにもみぢぬ 松も見えけれ”
                  詠み人知らず(古今和歌集)

 雪がしきりに降り、年が暮れ果てた時になって、初めてその風雪に耐えて最後まで紅葉しない松というもののよさがわかるのだ…。

 「歳寒くして、然る後に松柏の彫<しぼむ>に後<おくるる>を知る」(論語)を和歌にしたもの。…気候が寒くなって初めて、他の草木がしおれてしまっているのに、松や檜は枯れずに残っているのが分る。同様に困難に際して初めて、学問修養に努めている者の真価が分るのである。

 最近、統計に対する信頼が揺らぎ始めています。日本で最初の近代的生産統計「府県物産表」に関する太政官布告が公布された明治3年(1870年)9月24日を、太陽暦に換算した10月18日を「統計の日」と制定されています。今年の「統計の日」標語応募作品の小学生の部に選ばれた作品をご覧ください。

  『とうけいを ただしくつかって あかるいみらい』

 統計は明るい未来を築くための重要な基盤となるものですが、この小学生の標語にあるように「正しく」使おうにも、基幹統計で偽装があってはどうしようもありません。偽装はあってはならないことであり重大な犯罪でもあります。

 最近では。平成25年「労働時間等総合実態調査」裁量労働制の労働者の労働時間の異常値、平成28年12月、経済産業省の「繊維流通統計」過去のデータをそのまま数年使用、平成元年「毎月勤労統計」全数調査を抽出調査に変更するも復元処理をせず、などなど…。

 【国交省の統計書き換え問題】

 建設業の受注実態を表す国の基幹統計の調査で、国土交通省が建設業者から提出された受注実績のデータを無断で書き換えていたことがわかった。回収を担う都道府県に書き換えさせるなどし、公表した統計には同じ業者の受注実績を「二重計上」したものが含まれていた。建設業の受注状況が8年前から実態より過大になっており、統計法違反に当たる恐れがある。(2021/12/15朝日新聞)

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 今回の統計が、上の図にあるように、2ヶ月分を二重計上にしていること。国交省は、回収を担う都道府県の担当者に指示して、鉛筆で書き換え作業をさせていたこと。2013年度から今年3月まで続いていたこと。であり、単純な誤りというよりも、官僚の質の低下を窺わせます。そしてその期間が安倍首相の在任期間とぴったりであるため、地上、ネット併せて、揣摩臆測(しまおくそく:確かな根拠なく、僅かな情報を頼りにあれやこれやと想像すること)を呼ぶ始末です、まさか……。

 国の基幹統計というものは、すべての政策の基盤をなすものであり、少しでも誤りがあってはならず、偽装はもっての外。国際的にも信用の低下は免れず、国家の名誉を大いに毀損したことになります。

 そのために、統計法の第60条には「基幹統計の作成に従事する者で基幹統計をして真実に反するものたらしめる行為をした者は、6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処す」となっています。この条文に照らせば、今回の国土交通省による基幹統計の不適切な偽装は、犯罪に当たるほど重大な過失ではないでしょうか。

 ところが、衆議院予算委員会で、岸田首相は「大変遺憾なことであり、二度とこうしたことが起こらないよう再発防止に努めなければならない」と他人事のような発言。そして、今回の件の詳しい経緯や責任の所在を追及するための「第三者委員会」の立ち上げに関しては明確な回答を避けているのです。因みに、最近の国土交通省大臣は…、ズラーッと公明党ばかりです。何かあるのでしょうか。

   太田昭宏(公明党) 安倍晋三内閣
   石井啓一(公明党) 安倍晋三内閣
   赤羽一嘉(公明党) 安倍晋三内閣・菅義偉内閣
   斉藤鉄夫(公明党) 岸田文雄内閣

 今回の事態を見るに、何か責任感の欠如の様なものを感じます。そして、国家公務員としての自覚が薄く、緊張感に欠けているように思えてなりません。

 統計は国家の重要な基盤を成すものとして位置づけたのは吉田茂でした。吉田茂は、統計というエビデンスに基づいた意思決定や原理原則に沿った意思決定を重んじており、戦後復興のためには政府統計の充実が極めて肝要であると考えていたのです。その意味を踏まえ、政府統計に携わる人は国家の基礎に存するのだという気概を持ち、業務に励んでほしいものです。縁の下の存在かも知れませんが、誇りある崇高な仕事と言えるのではないでしょうか。

 今回の事態を奇禍として、政府としては、あらためて統計処理の充実を期すべきであり、滋賀大データサイエンス学部や同志社大文化情報学部はデータサイエンスを中核とした学部ですが、分かりやすい「統計学部」の新設なども検討すべきでだと思います。

 最後に、マーク・トウェインの言葉から。

 「私はしばしば数字に惑わされる。自分自身に当てはめる場合はなおさらだ。『嘘には三種類ある: 嘘、まっかな嘘、そして統計』(ディズレイリの言葉)が正当性と説得力をもって通用してしまうんだ」

 何はともあれ、統計の信頼性を確立することが肝要です。

 みなさんは、どのようにお考えでしょうか。

次回は
時事エッセー
です。

 

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