2022年「世界10大リスク」を読む!
825回目ブログです
“晴れずのみ ものぞ悲しき 秋霧は 心のうちに 立つにやあらむ”
和泉式部(平安中期・後拾遺和歌集)
心が晴れず、何となくもの悲しい思いばかりするのは、秋霧が私の心の内側に立ち込めているせいであろうか…・
年が明けても心が晴れる世の中ではなく、何となくもの悲しく、ヴェルレーヌの「落ち葉」の詩を思いだします。
落葉(ヴェルレーヌ) 上田敏訳詩集「海潮音」より
秋の日の ヰ"オロンの
ためいきの 身にしみて
ひたぶるに うら悲し。
鐘のおとに 胸ふたぎ
色かへて 涙ぐむ
過ぎし日の おもひでや。
げにわれは うらぶれて
ここかしこ さだめなく
とび散らふ 落葉かな。
世界最大規模の政治専門コンサルティング会社であるユーラシア・グループにより、例年注目される「世界の10大リスク」(2022) が1月3日に発表されました。ユーラシア・グループは、2011年に「Gゼロ」時代の到来を指摘したことで一躍有名。世界を動かすのは、G7<日米英独仏伊加>でもなく、G2<米中>でもなく、Gゼロ<リーダーなき世界>になってきていると鋭く指摘しています。
【2022年世界10大リスク】(ユーラシア・グループ)
(1)ゼロコロナ政策の失敗
(2)巨大IT企業の影響が強まる世界
(3)アメリカの中間選挙
(4)中国の国内政策
(5)ロシア
(6)イラン
(7)2歩前進、1歩後退の環境政策
(8)世界各地に「力の空白地帯」
(9)文化(価値観)戦争に敗れる企業
(10)トルコ
今年の「世界10大リスク」の第1位は「No zero Covid」(ゼロコロナ政策の失敗)とあります。先進国ではワクチン接種が進みパンデミックの消息が近づいているとしていますが、一方では、ほとんどの国は困難な時期を迎えることになると指摘しています。
そして、中国では、新型コロナの封じ込めを目指す「セロコロナ政策」は、2020年には成功したように見えましたが、ゼロコロナの出口が見えず、「中国は封じ込め政策に失敗、より大きな感染を引き起こし、深刻な都市封鎖につながるだろう」と予測しています。
他の国は、新型コロナを巡りパンデミック(世界的大流行)からエンデミック(風土病)局面への移行段階になってきましたが、中国だけは、これと逆行し、新規感染者を確認しだい、それ以上広がらないようにするべく、ロックダウンや大規模な検査などの措置を次々に打ち出しています。
現実に、中国は「冬季オリンピック北京2022」を控えて、12月23日から西安市(住民約1,300万人)でロックダウンに踏み切りました。現在、1ヶ月以上経過し、住民の生活や企業に多大な影響が出始めているとの報道がみられます。
こうしたやり方によって、感染者数は最低限でとどまり続けてきていますが、その結果、感染力が強いオミクロン株への脆弱性が増している点を専門家は指摘しています。
ロックダウンによって、コロナ「真空地帯」が生まれ自然感染者は極端に少なく、人口の大半が新型コロナに対する免疫を獲得していないため、もしも、他国同様に「ウィズコロナ」を実施すれば、1日で約63万人以上の感染者が出ると予測されています。
従って、このままロックダウンが進み、中国が最後のロックダウン解除国になるとすれば、個人消費、中国経済への損害ははかり知れなく大きなものになることが危惧されています。
北京冬季オリンピックを終えた段階で、中国がどのような感染症の環境にあるのか、冷静に見守りたいと思います。
中国には、それに加え「中国の国内政策」があります。現状について簡単に眺めてみましょう。
・2021年期別成長率は、深刻な状況にあります。
4 ~ 6月期:7.9%、
7 ~ 9月期:4.9%、
10~12月期:4.0%
7.9% → 4.9% → 4.0%と、釣瓶落としの下降。
・中国の「土地本位制」経済による不動産バブルの行く末。
中国恒大集団の33兆円債務をきっかけとしたデフォルト問題。
・21年の出生数が1,062万人と、建国以来で最低水準へ落ち込み。
一方、死亡者は1,014万人と出生数と接近している。
いよいよ、人口減社会へ突入。
・高齢化社会に突入。(人口1,000人当たり)
2021年 普通出生率 中国 7.52人
2019年 普通出生率 中国 10.50人
〃 米国 11.40人
〃 台湾 7.53人
〃 日本 7.00人
〃 韓国 5.90人
・更に、習近平氏(党中央委員会総書記・党中央軍事委員会主席・国家主席・国家軍事委員会主席・党中央政治局常務委員・中央国家安全委員会主席)は、終身、最高位を維持することを目指しているとも言われていますが、国内経済、社会が多端な折でもあり、果してどのようになるのか注目したいと思います。
その他、ロシアとウクライナがきな臭くなっており、予断を許せません。
本当に、世界のリスクは10どころではなく、浜の真砂ほどあると思われますが、それにしても、中国は10のリスクの内、第1位と第4位に掲げられているのですから、刮目して見なければならないのではないでしょうか。
みなさんはどのようにお考えでしょうか。
次回は
時事エッセー
です。
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コメント
ソ連が崩壊し、「米ソ冷戦が終焉した」と見えた1990年代は世界の著名な学者たちも近未来に対して楽観的な予測をしていた。ロシアは自由化し、中国も「開放路線」に舵をきり、米欧の政治家たちも中国が資本主義経済を導入して市民生活が豊かになれば、一党独裁体制も自然崩壊していくだろうと見た。特にアメリカのクリントン・オバマと続く民主党政権は「親中外交」こそ中国の民主化を促進する方法だと頑なに信じてきた。アメリカの経済界も10億人の新市場とのカップリングを歓迎した。1990年代のアメリカは、バブル後遺症で国力失墜の日本を横目に、アメリカの復権、American Democracyの正義を確信し、プロテスタント精神を蘇らせ、それを世界の果てまで広めようとした。だがイスラム世界はアメリカの独善的正義感に牙をむいた。21世紀はイスラム過激派のテロに始まり、ロシアは民主主義の仮面をかぶったプーチンがロマノフ王朝の専制主義を復権させ、新しいツアーとなった。そして中国はアメリカや日本との経済の緊密化を利用して軍事大国へとひた走り、民主化促進どころか日本やアメリカの最新技術を使って一党独裁体制を盤石にし、さらに中共帝国を拡大させてきた。学者も政治家も過ぎ去った日々のデータをもとに学説をたて未来を予測するしか手立てがないが、データの何を重視するか、どこに本質があるかを見抜く眼をもつ識者は皆無に等しい。それほど人間は個人も集団も不確定な行動をとる。予測不可能に近い外的世界の動向より、まず自国の経済復権、防衛力強化、人口増加、地方活性化等を通じてわが国の若者に日本の近未来に明るい展望を抱ける国づくりを、と願いたい。
投稿: 齋藤仁 | 2022年1月28日 (金) 09時06分