北京冬季オリンピック閉幕…異聞!
829回目ブログです
“ 梅咲いて 人の怒りの 悔いもあり ”
内藤露沾(江戸前/中期の俳人)
白い優雅な梅が咲いて、その静かな花を見ていると、人の心も清められ、落ち着いてくるようで、つまらない事で怒った事などに後悔の念が湧いて来るものである…。
2月20日、北京冬季オリンピックが閉幕しました。オリンピックは平和の祭典と呼ばれており、極限にまで鍛えたアスリートの美しい姿を通じた各種の競技から、大いなる感動を全世界の人々に与えるものではないでしょうか。
【日本のメダル獲得数】
金 銀 銅 合計
3 6 9 18
冬季北京五輪の総メダル数18個は歴代最多。金メダルは、スキージャンプ・ノーマルヒルの小林陵侑、スノーボード・ハーフパイプの平野歩夢、スピードスケート1000mの高木美帆の3名。その他、技の完成度で勝負して銅メダルをつかんだ坂本花織、スノーボード女子ビッグエアで後方に3回転する最高難度の大技の岩淵麗楽、フィギュア男子で史上初の4回転半ジャンプに果敢に挑戦した羽生結弦選手など、素晴らしい競技、演技で国民を感動の渦に巻き込んだ見事な冬季五輪だったと思います。
ところが、今回の北京冬季五輪は、どう見ても汚辱にまみれ、いわゆる平和の祭典から程遠い位置にあるものと言わざるを得ません。もちろん、素晴らしいドラマも数多く見せてもらいました。上掲の俳句にあるように、素晴らしいオリンピック競技という優雅な梅が咲いて、その静かな花を見ていると、つまらない事で怒ったことに後悔の念が湧いて来るものですが、さはさりながら、内心複雑なものもあり、異聞を含めた雑感を述べたいと思います。
・異聞①、まず、不思議に思ったことは、ソチ大会における組織的ドーピング違反で制裁中の国家首脳としてオリンピックへの参加が禁止されているにもかかわらず、「開催国首脳の招待」により開会式の貴賓席に座ったのが、何と「プーチン大統領」であったことです。
このことに対して、国際オリンピック委員会(IOC)は中国の習近平主席に抗議をしなかったのです。産経論説副委員長の別府育郎氏は「オリンピックが平和の祭典であるなら、対極にあるのは戦争であり、五輪の価値を毀損する内なる敵は競技の不正であり、その最たるものがドーピングだ」と述べていますが、氏の素晴らしい言説に敬意を表したいと思います。
それにしてもひどいものですね。IOCの源流がヨーロッパ貴族にあり、その薄汚れた精神を今に継承しているとすれば、根は深いと言わねばなりません。
・異聞②、中国における報道の自由が大幅に制限されていたことに留意しなければなりません。折角、中国に入国したのであれば、報道管制の網をくぐり、特ダネを取り、真相を解明、ベールを剥ぐなどのスクープを期待したのですが、成果は見られず。市民の真の声、中国の点描、ウイグルの実態、など求めても無駄でした。
言論統制は極端に厳しく、選手の政治的、宗教的、人種的な表現活動は目立たず、帰国してから、人権問題を抱える中国での五輪開催を決めたIOCを批判したメダリストもいました。
というのも、中国では2010年の「国防動員法」で、戦時は在外の一般国民も政府の指示に従うよう義務付け、2017年の「国家情報法」では平時でも国家の情報収集活動に協力するよう定め、中国政府は在外の自国民も動員するようになっていますから、中国人民の真の声を拾うことは不可能と言えるでしょう。
中国は、独裁、強権国家。また、許可なく中国人民と接触しようものなら、6億台の監視カメラで捕捉され、逮捕されること必定。くわばら、くわばら という訳で、外国人記者も選手も自重以外に打つ手はありません。
・異聞③、禁止薬物が検出されたフィギュアスケート女子のカミラ・ワリエワ選手(ロシア)。昨年12月に検出された「トリメタジジン」は世界ドーピング機関(WADA)の禁止薬物であり、過去にもロシアのボブスレー選手も処分対象となったこともありロシアとしては熟知の禁止薬物。
ところが、スポーツ仲裁裁判所(CAS)は、ラリエワ選手が16歳未満の「要保護者」に該当するとして五輪出場を認めたのです。ロシアはドーピング違反で処分中につき本来は五輪に出場不可です。そして、確かに、彼女が自分の意思で禁止薬物を摂取したとは考えにくく、周囲の関係者に依るものと考えたのでしょうか。
ワリエワの出場を認めたスポーツ仲裁裁判所の裁定に、米国オリンピック・パラリンピック委員会は「失望した」と批判の声明を出しました。しかしながら、日本オリンピック委員会は「沈黙」したままです。何という意識の浅さでしょうか、鈍感を取り越して愚鈍と言わねばなりません。
彼女は、自分のドーピング騒動で精神的に不安定になり、フリーの演技では考えられない転倒を何度も繰り返し4位に終わり、泣き崩れました。(私もテレビで観戦) 彼女を16歳未満だとして出場を認めた大人たちの判断は、青い果実の未来を奪い去った点で罪が深いのではないでしょうか。
・異聞④、スキージャンプの高梨沙羅は、混合団体で個人ノーマルヒルと同じスーツが規定違反と判定され失格。女子20選手中5人が失格となる異常事態となりました。20人中5人が失格、何か釈然としません。正常に戻してもらいたいものです。
・異聞⑤、フィギュアスケートの男子ショートプログラム(SP)で、羽生結弦は、氷の穴にはまり、冒頭の4回転サルコーが1回転になる不運に会いました。氷上にこのような穴があることは滅多にないものであり、穴があってももう少し小さな穴だそうです。超不運、最悪のタイミング。世紀の本番で起きるのですから、世の中って不可解だとしか言えません。こんなことってあるのですね。それにしても、羽生結弦選手はフリーの演技を精一杯頑張り、4位にまで押し上げました。さすがに世界の王者!と感動をあらたにしたところです。
異聞・雑感を記しましたが、最後に。
・中国も、ロシアも、オリンピックを政治のツールとして位置付け、
人類のための平和の祭典との意識は全く見られなかった。
・IOCは、高邁な理想を失い堕落の道を歩んでいる。
みなさんはどのように感じられたでしょうか。
次回は
時事エッセー
です。
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コメント
国際オリンピック委員会に限らずサッカーやテニスその他で世界大会を主催してきた組織は米英仏などの特権階級が設立したもので、アジアやアフリカは後からその大会に参加した、というより彼らの本音はアジア、アフリカのスポーツ後進国にも参加させてあげるよという意識があるのではないか。サッカーを初めて日本で開催と決定した後に韓国を加えて日韓両国共催に変更されたことがあったが、共催にした理由の一つは「開催国も含めてルールを決めるのは俺たちだ」という彼らの驕りであり、もう一つの理由は「韓国が大金をばらまいた」、すなわち彼らがスポーツを利用した金儲けに走ったから。彼ら特権階級が主宰する大会では、必ず開催国のチームや選手が意外な勝ち上がり方をすることをスポーツ愛好家は知っている。スポーツと政治は無縁とし、平和、友好、フェアプレーなどの美辞麗句を掲げながらその裏で、正反対のことをやりながら金儲けをする。その実態を日本以外の世界の国々の政治家は知悉しているから、会場運営者も審判も、さらには競技委員も動かしてルールの突然の変更などに暗躍する。雪の降らない北京での冬季オリンピックを決めた時点で「選手のため」でなく「特権階級の金儲けのため」であることは明らか。完全に公正・公平なスポーツ競技を望むのは児戯に似ているし、試合中の審判が判断ミスをすることは当然ある。大切なのは試合後に審判員団が採点等を見直し、間違いを正すシステムを確立することである。それは開催国に問題があれば、大会終了後に「あの国での開催は間違っていた」という声明を出すことも含めてである。金儲けのスポーツであっても、少しだけ公正、正義の味付けをしてほしいものだが、特権層には無理な願いか。
投稿: 齋藤仁 | 2022年2月25日 (金) 08時52分