“消費税減税”… なぜ実施しないのか!
865回目のブログです
“吉野山 風に乱るる もみぢ葉は わが打つ太刀の 血煙と見よ”
吉村寅太郎(勤王の志士・天誅組)
吉野山の風に吹かれる紅葉の葉の色は、乱れる時勢に対して振るった自分の太刀による血煙の色と見よ…。
勤王の志士が紅葉で有名な景色を誇る「吉野山」を仰ぎ見る時の感慨は、自らの振るった太刀による血煙を連想させるほどの命をかけた「紅い志」であったことを教えてくれています。
さて、10月28日、政府は「総合経済対策」を発表しましたが、岸田首相は、果たして、上掲の志士の和歌にあるような “燃える心”で取り組んだのでしょうか。今は、経済問題において難題の降りかかった時でもありますので検討してみたいと思います。
■政府は、物価高などに対応する新たな経済総合対策の規模として、国費の一般会計歳出で29兆1,000億円としました。当初は25億1,000億円の案でしたが与党の声を反映して29兆1,000億円としたものです。
■電気(7円/1kw減額)、都市ガス(30円/1立方m減額)の価格抑制のほか、ガソリン価格抑制の補助金は来年も継続。それにより標準的世帯の光熱費・ガソリン代負担を来年1月から9月までの総額で4万5,000円軽減できると見込んでいます。
今、家計を苦しめているのは、依然として低迷している収入であり、毎日購入するモノとサービスの大幅な値上がりです。物価狂乱とも言うべき実態をごらんください。
【5年間の物価高騰】
(2017年秋) (2022年秋) (上昇率)
アジ(100g) 99円 171円 1.73(倍)
サケ(100g) 331円 461円 1.48
ねぎ(1㎏) 666円 857円 1.29
大根(1㎏) 186円 260円 1.40
人参(1㎏) 325円 494円 1.52
ぶどう(1㎏) 1,186円 1,847円 1.56
食パン(1㎏) 434円 495円 1.14
小麦粉(1㎏ 233円 327円 1.40
チーズ(100g) 184円 224円 1.22
食用油(1ℓ) 291円 485円 1.67
電気代(1ヶ月) 12,490円 16,620円 1.33
ガス代(1ヶ月) 4,888円 6,208円 1.27
洗濯用洗剤(1㎏) 302円 389円 1.29
ワイシャツ(1枚) 2,705円 3,008円 1.11
自転車(1台) 37,648円 43,663円 1.16
総務省(小売物価統計調査/東京都区部)
ここにきて、まだまだ物価は上昇しつつあります。本来ならば、物価の上昇に応じて多少遅ればせながら賃金も上昇するという好循環があればいいのですが、それもままならず、その要因に税の歪さが挙げられるのではないでしょうか。税収の内訳を見てみましょう。
消費税 所得税 法人税 その他 総税収
◎1989年 3.3 21.4 19.0 11.2 54.9
《消費税3%》
◎1997年 9.3 19.2 13.5 11.9 53.9
《消費税5%》
◎2014年 16.0 16.8 11.0 10.2 54.0
《消費税8%》
◎2020年 21.0 19.2 11.2 9.4 60.8
《消費税10%》
およそ30年間の消費税の推移を眺めると、この間、消費税と共に経済の低迷があったように見えます。そして、現実の2020年で見れば、消費税は21.0兆円、総税収60.8兆円の何と35%を占めています。これは、消費が減退しデフレの一要因になっていたことを示しているのではないでしょうか。
一方、法人税は、19.0兆円から11.2兆円に大幅減少。そして、何と、その間、企業の『現預金』が「164兆円」から「308兆円」に激増。これは何を意味するかと言えば、企業は総じて、成長のための設備投資、及び社員に対する給料アップ(すなわち人間投資・人材育成)を怠ったことを意味します。
ということで、失われた25年、あるいは低迷の30年、その間における国家的損失ははかり知れず、国益を大きく毀損したと思われます。
このようにわが国の政治・経済を振りかえって見た時、なぜ大胆な政策を取り入れることを決断しないのでしょうか。大胆な政策…それは『消費税の減税』に他なりません。テレビで有名な林修さんの言葉を借りれば、それは“今でしょう”!
ところが、岸田首相は、今回の「総合経済対策」を検討するに当たって、何と『消費税減税を一切検討しない』と言明したのです。唖然、茫然。あらゆる選択肢の中から最善の策を講ずるのが知性と教養と勇気を誇る政治家の使命ではないのでしょうか。くだらないことは検討しても消費税は検討しないとは「検討使」のニックネームが泣こうと言うもの。せめて、検討だけは行って欲しいものです。
物価高なのに賃金下落の今ほど「消費税減税」が求められる状況はないのではないでしょうか。
過去の2年間で欧米諸国は軒並み “躊躇なく” 減税しました。ある識者は「消費を押し上げて経済を回復軌道に乗せるには、日本でも消費税減税がもっとも効果が高いでしょう。国民はまだ消費税10%に慣れておらず、3年前の消費税増税の影響がボディブローのように残っている。そこへきて物価高にも見舞われ、ますます消費マインドが冷え込んでいるからです」と論じています。
2年間の時限的措置でもいいので、消費税を5%に戻すか、0%にすべきかを検討すべき。
いま、岸田内閣は、対面調査で信頼性の高い時事通信の世論調査(10/7~10)では支持率27.4%、不支持率43.0%であり、自民党支持率は23.5となっており、内閣の安定度を示す【青木の法則】では、
岸田内閣支持率(27.4%)+自民党支持率(23.5%)=50.9ポイント
何と、内閣が倒れる50ポイントという危険水域ギリギリの数値を示しています。とすれば、乾坤一擲(けんこんいってき・運命をかけて大勝負をすること)、財務省の風下にうずくまる姿勢を跳ねのけ「消費税減税」に踏み込んではいかがでしょうか。そうすれば、国民の圧倒的な支持を得られるに違いなく、岸田内閣の起死回生の延命策ともなるのではないでしょうか。
勇気を出して欲しいとは思いますが、しょせんは無理でしょうか……。
みなさんはどのようにお考えでしょうか。
次回は
時事エッセー
です。
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コメント
消費税減税は総合的な経済対策として間違っていないが、行政の立場からは実現不可能だろう。10%を8%に戻せるなら与野党に限らず次の首相も景気浮揚策に名を借りた人気取りのために消費税減税に走ろうとするだろう。当然ながら首相も含めた国会議員は数年ごとに選挙という洗礼を受けねばらならないから「人気取り」に走る。そして選挙民の多くは「国家の将来」や「日本国のあるべき姿」より「現世利益」すなわち隣人がどうあれ、己や己の家族の幸福第一かつ明日の備えより今日の享楽、困ったら国や社会が助けてくれる、という根拠なき楽観の中に生きている。生活費への課税である消費税は国内で生活しているすべての国民に均等に課せられる税であり、4人に1人と言われる高齢者にも激増している居留外国人にも等しく課せられることで、成年・壮年層の負担を幾分なりとも和らげている。
私の提案は二つで、一つは経済学者の高橋洋一氏が説く政府保有のアメリカ国債売却である。円安の今売却すれば30兆円になる。もう一つの提案は防衛費に特定した防衛国債を日本国民及び日本企業対象に募ることである。五年債十年債、二十年債の三種類とする。富裕層の中には遺産相続の子のいない人や、相続させたくない子や孫のいる人もいて煩悩に駆られている人も少なくないだろう。また日本の国防状況を憂いながらも財務省に遺産を吸収されたらさらに財務省政府に・・と憤っている人も多いだろう。そういう憂国の情をもった人達は二十年三十年の長期の防衛国債が発行されたら寄付する思いで購入するのではないか。遺産として子や孫に残すこともできるし、日本を愛する高齢の富裕層には母国の将来に希望を託せる国策ではなかなろうか。岸田首相もも財務省に防衛予算増を卑屈になって懇願する必要がなくなるだろう。事実、故石原慎太郎氏が尖閣諸島を東京都が購入すると語ったとき全国から十数億のお金が集まっている。以上二つは「決断できない内閣」でも決断できる提案だと思うが。
投稿: 齋藤 仁 | 2022年11月 4日 (金) 08時40分