米中間選挙決着…民主党「善戦」or共和党「勝利」?
870回目のブログです
“夕暮れは ものぞかなしき 鐘の音 あすもきくべき 身としらねば”
和泉式部(平安中期・詞花和歌集)
夕暮れはなんと悲しいことだ。入相の鐘を明日も聞くことの出来る身だとは分からないので…。
日暮れ時に寺でつく入相の鐘の音を聞いて詠んだ歌。入相の鐘が明日も同じように聞けるとは限らないと思うと、この日この日を大切にして生きて行かねば、という気持でしょうか。
サッカーワールドカップ(W杯)で、日本は強豪スペインを2対1で破り、決勝トーナメントに進出。決勝トーナメント1回戦のクロアチア戦で死闘を演じましたが、残念ながら、PK戦の末に日本代表は敗退しました。日本代表にはサッカーの醍醐味を堪能させてもらったことに心から感謝します。
勝負は勝つか負けるかであり、スポーツはもとより、政治の世界でも熾烈な争いが演じられています。ところで、さる11月8日、米国で行われた中間選挙の結果が、遅ればせながら、何と、約1ヶ月後の今頃全議席が確定するという世界最先進国らしからぬ実態に驚きを隠せません。
■ 米上院 民主候補が勝利(当選確実)
ジョージア州の12月6日の決選投票の結果、民主党候補が勝利しました。
(CNN)
【米国上院・中間選挙結果】
全議席100確定:(過半数=51)
改選前 改選後 増減
共和党 50 49 ▲1
民主党 50 51 △1
(総計) (100)(100)
上院は、民主党が、従来(50+議長/副大統領=51)通り、過半を維持しており、その範囲で主導権は保てたと言えるでしょう。
■ 米中間選挙で下院「全議席確定」、共和党222・民主党213
米CNNは3日、11月8日に実施された中間選挙の下院選(定数435)で、野党・共和党が222議席、与党・民主党が213議席をそれぞれ固め、全議席が確定したと報じた。改選前は、民主党が過半数(218)を上回る220議席、共和党が212議席、欠員3だった。 (12/4…読売新聞)
【米国下院・中間選挙結果】
全議席435確定:(過半数=218)
改選前 改選後 増減
共和党 212 222 △10
民主党 220 213 ▲ 7
欠 員 3 0
(総計) (435)(435)
下院の結果をみなさんはどのように判断されますか。わたしは、共和党は議席を改選前より10議席増加させ、過半数の218を確保したのですからまぎれもなく勝利したと判断します。そして、民主党は改選前より7議席減らし、過半数を確保できなかったので敗北したものと考えます。
素直に考えれば、このような判断に落ち着くと思いますが、世のなかの一部の指導者の見立ては、「民主党善戦」「共和党敗北」という判断をしたのです。その人達は、米国も、日本も同じ、マスコミ・学者・コンメンテーターなどであり、常にイデオロギー偏光眼鏡で世の中を眺めていると言え、誠に始末に負えません。
確かに、上院は民主党が辛うじて過半を制しましたが、最大のポイントは、共和党が下院での過半数を制覇したことにあるのではないでしょうか。その結果、バイデン大統領は、上下両院での円滑な政権運営に支障が生じるとともに、身内の不正(次男ハンター氏)疑惑に関し共和党主導の下院から厳しい刃を突き付けられることになりそうです。
年初から始まるアメリカ新議会・下院では、議長はもちろん共和党。そして外交、軍事、などの20の委員会、インテリジェンスや気候変動などの5つの特別委員会などの委員長のすべては共和党議員が占めることになります。要するに、議会は、バイデン民主党大統領の思いのままに動かせた従来とは全く異なる事態になったことを知らなければなりません。
このように、バイデン大統領が下院議会からの挑戦を正面から受けることが予想されるにもかかわらず、それに言及したメディアは少なく、アメリカの民主党寄りメディアや日本の主要メディアの多く、さらには日本のアメリカ通とされる人たちは「バイデン大統領も民主党も予想以上に善戦した」「共和党の党カラーの赤い波は全土に広がらなかった」と総括していますが、総合的に見れば、事実は、民主党の敗北、共和党の勝利と評すべきではないでしょうか。(JBpress 小森氏論稿より)
その他、日米のメディアから引用してみましょう。
・『ワシントンで取材するBBCのデイヴィッド・ウィリス記者は、アメリカの中間選挙では現職大統領の政党が大きく議席を失うのが常だったと指摘した上で、与党・民主党は今回、優れた結果を出したと評価した』
(11/13 BBC News)
・『今回の中間選挙についても、前評判では、両院ともに、野党共和党が多数支配を奪回「地滑り的勝利」のはずだったが、ふたを開けてみると予想以上に民主党が善戦した。ある意味では、トランプ氏の影をひきずったままの共和党は〝敗北〟に近い結果に終わったともいえる』
(11/18 斎藤 彰氏・元読売新聞米総局長・Wedge ONLINE)
中間選挙に対するメディアやアメリカ通の戦前予想では、上院、下院ともに共和党が圧倒的な多数支配を果たすはずでしたが、結果は見ての通り、上院は従来と変わらず、下院は共和党が民主党に勝利し大きな変動を齎しました。
マスメディアは、自らの予想(読み)が外れたことで、選挙結果を冷静に見ることができず、共和党やトランプ氏に八つ当たりしているとしか思えません。
下院については、
【共和党】212⇒222 △10増・◎過半数獲得 ⇒ 勝利
【民主党】220⇒213 ▲ 7減・×過半数不可 ⇒ 敗北
上院については、民主党の勝利により変動なしと評価すべきでしょう。
何はともあれ、イデオロギー偏向眼鏡で見ることを避け、曇りのない眼鏡で世の中を見ることが大切ではないでしょうか。
サッカーのW杯を見ての感想です。
みなさんはどのようにお考えでしょうか。
次回は
時事エッセー
です。
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コメント
江戸末期の日本の武士や学者はアメリカという移民国家がワシントンなどの市民によって独立国家となったということを知っていた。その市民国家ともいうべきアメリカが黒船の艦隊を組んで来航した。一方、武力で長年政権をとってきた江戸幕府の幕僚はその黒船艦隊に対して右往左往するばかりで、令和の首相のように優柔不断に嵐の過ぎるのを待っていた。アメリカは建国の精神として常に清教徒の高潔な思想を高らかに掲げているが、国家や国民の生活の根底にあるのは実力主義・実用主義・合理主義であり、それは二千年間にわたって母国をもたなかったユダヤ人のサバイバル思想に近侍している。つまり正義は勝利者の掌中にあるということだ。素朴にアメリカ民主主義を理想形としてきた日本人は、2020年のトランプ・バイデンの選挙戦の異常さに驚いたが、アメリカの大統領選は昔から票の買収など当然の不正選挙の温床だった。F・ルーズベルトが「戦争はしません」と約束しながら戦争に向けて暗躍したように、多くの大統領が選挙民を騙して当選してきた。2020年の大統領選や22年の中間選挙のように、民主主義の選挙なら絶対守らなければならないはずの選挙資格や選挙日などのルールさえも逸脱しても構わないとなると選ばれた議員や大統領って本当に多数派の民意に基づいているのか疑問を持って当然なのに、アメリカの主要メディアも日本のメディアもそれを指摘しない。GAFAなる民間の大企業の政治献金額はアメリカの主要メディアと同じで、民主党が共和党の10倍以上集めている。民間企業だからどこの政党に献金しようと問題ないが、大統領選も議員選もアメリカ国民の支持率は互いに50%前後である。そこから見える結論はアメリカ国民の意思と関係なく、メディアや通信・ITなどの大企業は民主党に偏向しているということである。イーロン・マスクがTwitter社を買収して、社内で民主党贔屓の言論空間づくりがされていたことを暴露している。しかもその中心にFBI関係者が入っていたことも。こうなると中国の言論統制とアメリカの言論統制とどこがどの程度違うのかわからない。戸籍に基づいて公職選挙法をしっかり守っている日本のほうがよほど本物の民主主義国家だと言えるのではないか。ただ一つ言えるのは、アメリカ社会の本質は民主主義でなく弱肉強食を生き抜いたヨーロッパ諸国の「力が正義」にあるということだ。願わくば「力が正義」を対ロシア戦や対中共戦でも貫いてもらいたい。同じ実力主義でもアメリカの方が、ロシアや中国よりましだから。
投稿: 齋藤 仁 | 2022年12月 9日 (金) 08時46分