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2022年12月 2日 (金)

エコ・テロリズムを考える!

 869回目のブログです

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 “君が行く 海辺の宿に 霧立たば 吾が立ち嘆く 息と知りませ”
                                   (遣新羅使の妻・万葉集)

 貴方が行く先々の海辺の宿にもし霧が立ったとしたなら、その霧は、お帰りを今か今かと、お待ちしながら嘆いている私の深いため息だと思って下さいね…。

 「新羅」(しらぎ)は朝鮮半島の南部にあった国。この時、新羅と日本の関係は平穏ではなく、また、帰途に病に倒れるものが多く、帰り着くのが大幅に遅れ、残された家族の心配の種は絶えなかったと思われます。万葉集の中でも流暢な調べの恋歌として有名です。

 心豊かな万葉集の和歌を取り上げましたが、それに引きかえ、現代の世の中には、何とも奇妙な思想・殺伐な心の持ち主が跋扈していることに驚きを隠すことは出来ません。

 先月のはじめ、エジプト保養地で国連のCOP27(気候変動枠組条約締約国会議)が始まりましたが、盛り上がった論争もなく、話題になったのが「エコ・テロリスト」の破壊活動でした。

  エコ・テロリズム】(eco-terrorism)

 環境保護や動物愛護などを活動目的として掲げ、目的達成のための手段
 として、脅迫や破壊・略奪といった、過激で非合法なテロ行為を行うこと。

 「エコ・テロリズム」「エコ・テロリスト」活動の実例を…。

「環境保護団体Just Stop Oil」は今年2月の設立。10月14日、ロンドンの美術館で20歳と21歳の女性が突然、ゴッホの『ひまわり』にスープをぶちまけた。作品は無傷でふたりは逮捕された。

交通量の多い幹線道路に座り込む抗議行動も彼らの定番。自らの身体を地面に接着する者も。

7月5日、活動家がダ・ヴィンチの『最後の晩餐』(複製画)の下に「NO NEW OIL」と書き、自らの手を接着剤で額に貼り付けた。

10月24日、ロンドンの蝋人形館ミュージアムでチャールズ国王の顔にチョコレートケーキを。

石油備蓄施設に入るタンクローリーを妨害。ガソリンスタンドで給油機を破壊する暴挙も。

老舗百貨店ハローズにオレンジ色のペンキをぶちまける。ロレックスやフェラーリのショールーム、イングランド銀行なども被害に。

3月17日、エバートンVSニューカッスル戦の試合中に若い男性が乱入。ゴールポストに自分の首を結束バンドでくくりつけ、試合を中断させた。

7月3日にはレース中のサーキットに飛び込んで座り込むという超危険行為も。

 その他、挙げれば切がありませんが、名画では、ヨハネス・フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」、フランシスコ・ゴヤの「着衣のマハ」と「はだかのマハ」など。

 何故、環境保護団体がゴッホの作品を襲ったのでしょうか。逮捕された容疑者は「絵画の保護と地球や人類の保護と、どちらが重要なのか!」などと叫んだようですが、どうにも理解できかねます。これでは、文化の破壊であって、エコ・テロリズムという他になさそうです。彼らは、これを称してソフトテロと言っているそうですから、文化を破壊しても何の痛痒も感じないのでしょう。

 エコ・テロリズムで世界的に名高いのは、反捕鯨団体のシー・シェパード。アイスランドやノルウエーの捕鯨船に体当たりして沈没させたり、日本の調査捕鯨船にも体当たり、更には、捕鯨船に給油するタンカーに発煙筒を投げ込んだり、その行為は超危険そのもの。

 彼らは、ものの破壊はもとより人の犠牲も考慮せず、法を超えた正義に陶酔し、逮捕も厭わない洗脳的な信念の持ち主と言わねばなりません。過激な行動は今後もしばらくは続くとみられますが、ゴッホの絵にスープをかけたりするようなエコ・テロリストの破壊活動は、典型的な左翼運動の末期症状と言わねばなりません。

 これについてマルクス経済学者の斎藤幸平氏(東京大学准教授)は「ゴッホの絵を汚した行動を理解しろ」と書いて強烈な批判を浴びました。

 『彼女ら(エコ・テロリスト)はすでにデモも、署名も、政治家への嘆願も、何年間も地道に行ってきた。けれども、二酸化炭素の排出量は減っていない。要するに、今までのやり方では、まったくもって不十分なのだ。みんなが、もっと真剣に、この危機にどう対処すべきかを考えなければならないのに。そんな状況での苦肉の策が今回の行為というわけだ。地球を守るべきときになにもせず、資本主義社会はたった1枚の絵画に120億円という何人もの命や環境改善をできるバカみたいな価格をつけて、崇めている』

 デモも、署名も、歎願も、何年間も地道に行ってきたが、世間は無関心だからテロ行為に及んだという理屈です。この理屈が通るならば、統一教会に地道に歎願しても聞いて貰えられなかったから、安倍元首相を暗殺してもいいということになります。

 左翼は、社会に不満を持つ大衆のルサンチマン(怨恨)に視点を当て、「反資本主義」「反米」「ベトナム反戦」などと唱えましたが、ルサンチマンが無くなると、「反公害」「反差別」、そしていつの間にやら、『環境』へと表面的には変貌してきました。

 左翼(サヨク)は今や、行き場がなくなり、環境という衣を羽織ることになったのです。しかしながら、心の内はサヨク思想(マルクス主義・共産主義・社会主義・独裁主義・権威主義・権力主義)、憧れはソ連・中国・北朝鮮、理想はユートピア・理想郷・青い鳥、から離れられないようです。

 マルクス経済学者の斎藤幸平准教授は、資本主義のもとで生じている問題点として、格差が圧倒的に広がっていること、気候変動が深刻であること、の2点を挙げており、その解決にマルクス主義が貢献するとの見方を示しています…。

 マルクス主義は、すでに歴史的に敗北した理論であり、ルサンチマンに基づいた怨念であるマルクス思想が混迷する現代を救うものだとは到底考えられません。

 最後に。エコ・テロリストは、名画などの歴史的文化遺産を破壊することを止めるべきではないでしょうか。歴史的文化遺産の破壊は歴史への冒涜に他なりませんから。

 そして、有識者には、市民の破壊活動に対する扇動を抑制して貰いたいと考えます。

 エコ・テロリズムは恥ずべき行為です。

 みなさんはどのようにお考えでしょうか。

次回は
時事エッセー
です。

 

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コメント

私も斎藤幸平氏の本と、それに関係しそうな他書を読みました。御手隙にでもご笑覧いただければ幸甚です。

人新世の「資本論」
http://rootakashi.cocolog-nifty.com/blog/2022/06/post-f40c7e.html

気候変動の真実
http://rootakashi.cocolog-nifty.com/blog/2022/06/post-d635c9.html

自由と成長の経済学
http://rootakashi.cocolog-nifty.com/blog/2022/03/post-22c32b.html

投稿: 小野公三 | 2022年12月 3日 (土) 09時03分

資本主義世界だから①経済格差が拡大し、②気候変動が深刻化しているという斎藤幸平東大准教授の主張の単純さに呆然。どんなに経済学を学んでもその前提が間違っていればトンデモナイ結論に至るのは子供でも分かる。これは厚労省主導のウィルス感染症対策や財務省理論前提の防衛増強論でも同じである。両省とも専門家を集めて検討した結果などと説明するが、集まった専門家の顔ぶれと検討内容を詳細に調べれば、その時点で省として前提が決定している。従って感染症を第五類に変更できず、GNP2%の防衛費も骨抜きになる。冒頭の准教授の出した結論についていえば、社会主義国家には格差はないのか、資本主義社会の個人資産上位の人と、社会主義社会上位の人を国内の平均所得との差で比較すべきであるが、それ以上に資本主義国の上位者は民間人だが、社会主義国の上位者は政治家や党の指導者層である。つまり政治権力と経済力の両者を握っており国家社会を公的にも実力的にも支配できる人々である。同じ格差社会なら私は資本主義社会を選ぶ。次に資本主義が環境社会の深刻化を招いているというが、旧ソ連や中国、北朝鮮などと社会主義国あるいは今も世界に数多ある全体主義国の炭素排出量と比べて資本主義国はどうなのか。いずれも社会主義・全体主義国のほうが問題ではないか。古今のそして東西の人間を見、人間社会を観れば、科学技術の発展とともに人間の行動域は拡大する。資本主義だけがグローバリズムを生んだのではない。中国は十数億の人々を一括監視するスーパー地域世界を作っているが、中国の支配地がユーラシア大陸全体に広がれば、大陸全体が一括監視され、アメリカ資本主義を凌駕する完璧な大陸グローバリズムになる。もちろん環境破壊でも何でも指導者の意のままにできることになる。グローバリズムも環境破壊も資本主義が根本原因ではないことは子供でも分かる。資本主義が文明文化の発展速度を上げたことは確かだが、専制国家の時代が二千年続いてもいずれ同じように累乗的に科学技術が発展する時代は来ることは推測できる。マルクスも商品価値はそれを生産するに要した労働価値によって決定するという前提から共産主義理論を構築したようだが、それだけで本当に商品価値は決まるのか疑問に思わなかったのだろうか?前提を間違えたまま研究を進めると人類を滅ぼす結論にたどり着くこともあるのではないか。「人は如何にしたら人生を豊かに生きることができるのか?」と考え詰めたあげく自らの生を閉じるという思わぬ結論を出す例もある。

投稿: 齋藤 仁 | 2022年12月 2日 (金) 08時54分

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