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2024年2月23日 (金)

≪中国衰退論≫は間違い!…3つの視点から見る

 900回目のブログです。

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 “酒杯に 梅の花浮かべ 思ふどち 飲みての後は 散りぬともよし”
                  大伴坂上郎女(万葉集)

 盃に梅の花を浮かべて、親しい仲間同士で飲み合った後ならば、梅の花は散ってもかまわない…。

 可憐にして儚なそうな梅の花が、今を盛りと初春の澄み切った青空を背景に咲きほこっています。なかなか穏やかな風情ではありますが、世のなかは何となく騒がしく、特に世界の情勢は緊迫の度合いを増すばかりではないでしょうか。

 このような時、無粋を顧みず、大陸にある大国チャイナ(中華人民共和国)の現状を点描してみたいと思います。

 1つ目のポイントから。“中国経済”が深刻な状況に陥っていることは信じられないようなニュースからも伺うことができます。

「中国の地方公務員が半年間給料未払い」、これは中国の地方政府が深刻な財政難に陥っているためだと言われています。

「不動産バブルの崩壊が本格化」、2019年から不動産企業の破綻が見られるようになり、昨年からは巨大不動産企業の恒大集団(エバーグランデ)、碧桂園(カントリー・ガーデン)などが破産。恒大集団はNYで破産申請、何と48兆円の負債という。

 日本のかつての不動産バブル崩壊に伴う債務はGDP比20%、中国はGDP比200%、と言われていますから、中国の苦境は底なし沼かも知れません。

「脱中国の動き加速化」、世界企業は、サプライチェーン見直し、生産年齢人口の減少(2013年ピーク)や賃金上昇による安価労働力の見直し、中国共産党の仕切りなど、中国リスクを積極的に回避すべく具体化しています。アップルはベトナムへ、ナイキはベトナム、インドネシアへなど。参考に、各国の賃金を見てみましょう。

  【製造業・作業員平均月額賃金】

     中国      651ドル(約88,000円)
     インドネシア  360ドル(約49,000円)
     インド     316ドル(約43,000円)
     ベトナム    265ドル(約36,000円)
     バングラデシュ 105ドル(約14,000円)
               (2021年、ジェトロ)

「若者の大幅な失業率」、中国当局は1/17、都市部の若者失業者は14.9%と発表しました。昨年は21.3%、ただし、北京大教授によると実際は家庭に寝そべっている者を含めると46.5%とのこと。中国では、統計の数字は状況に応じて上層部に忖度して基準も変え、今回の21.3% ⇒14.9%と、さも、景気が上向いてきたかのように統計数字を操作しています。これを称して『指令経済』と言うそうですが、中国の統計数字は信用できません。

 それでは、次に、2つ目のポイントを見ていきましょう。

中国の李強首相は、今年1月16日ダボスの「世界経済フォーラム」で、「2023年のGDP成長率は5.2%、中国経済には莫大な潜在力があり、それを選ぶことはリスクではなく、機会である」とし、中国を安定した投資先としてアピールしました。しかしながら、聴衆は懐疑的だったと報じられています。

新アメリカ安全保障センターのリチャード・フォンテイン理事長は、中国衰退論は尚早、危険であり、それを前提にすることは愚かだと述べました。

中国は、現在アジア最大の空軍と世界最大の海軍を有し、艦船や潜水艦は370隻以上保有。新たな弾道ミサイル等核兵器や運搬手段を急速に拡大、さらに多くの国々で軍事基地や拠点を拡大しようとしています。

人口減少が指摘されてはいますが、他国と比較すれば中国の人口はいまだ並外れて巨大であることを認識しなければなりません。

習近平総書記は世界覇権の壮大な野心を依然として持ち続けています。

中国経済は非常に大きくその利点も“戦略的”に展開。「重要技術分野」でも。米国主導の制約を克服しながら革新を続けていることに注目しなければなりません。

 それでは、次に3つ目のポイント。中国は本当に落ち目?「オーストラリア戦略政策研究所」の強烈なレポートからその実態を見ていきましょう。

 【44分野の先端的テクノロジーの開発状況】

 ※「技術独占リスク」とは、その分野の首位となっている国がテクノロジーの供給するリスクを「低、中、高」の3段階でランク付したもの。もし中国が首位のテクノロジー分野で「技術独占リスク」が高い場合、この分野のテクノロジーは中国の供給に全面的に依存することになることを示しています。

   先端産業分野       主導国 技術独占リスク

 <最先端素材と製造業>

  1. ナノスケール材料と製造   中国  高
  2. コーティング        中国  高
  3. スマート素材        中国  中
  4. 先端複合材料        中国  中
  5. 新規メタマテリアル     中国  中
  6. ハイスペック加工過程    中国  中
  7. 高度な爆薬とエネルギー材料 中国  中
  8. 重要鉱物の抽出と加工    中国  低
  9. 先端磁石と超電導体     中国  低
 10. 先進保護技術         中国  低
 11. 連続フロー化学合成      中国  低
 12. 積層造形                                中国  低

 <人工知能、コンピューティングと通信>

 13. 高度無線通信                         中国  高
 14. 高度光通信                            中国  中
 15. 人工知能          中国  中
 16. ブロックチェーン技術    中国  中
 17. 高度なデータ分析      中国  中
 18. 機械学習          中国  低
 19. サイバーセキュリティ    中国  低
 20. 高性能コンピューティング  米国  低
 21. 先端集積回路の設計と製造  米国  低
 22. 自然言語処理        米国  低

 <エネルギーと環境>

 23. 電力用水素・アンモニア   中国  高
 24. スーパーキャパシタ     中国  高
 25. 電気と電池         中国  高
 26. 太陽光発電         中国  中
 27. 核廃棄物管理とリサイクル  中国  中
 28. 指向性エネルギー技術    中国  中
 29. バイオ燃料         中国  低
 30. 原子力           中国  低

 <量子テクノロジー>

 31. 量子コンピューティング   米国  中
 32. ポスト量子暗号       中国  低
 33. 量子通信          中国  低
 34. 量子センサー        中国  低

 <バイオテクノロジー、遺伝子技術、ワクチン>

 35. 合成生物学         中国  高
 36. 生物学的製造        中国  中
 37. ワクチン・医療対策     米国  中

 <センシング、タイミングとナビゲーション>

 38. フォトニックセンサー    中国  高

 <防衛、宇宙、ロボット、輸送>

 39. 先進航空機エンジン     中国  中
 40. ドローン、協働ロボット   中国      中
 41. 小型衛星              米国  低
 42. 自律システム運用技術    中国      低
 43. 先端ロボット技術          中国  低
 44. 宇宙打ち上げシステム        米国  低

 驚愕の事実! 

          首位の数
    中 国   37(分野) (84%)
    米 国    7( 〃 ) (16%)
    (総計)  (44)  

 何と、44分野のうち中国が37分野で首位とは! 中国の躍進がいかにすさまじいか分かろうというもの。

 わが国は、44分野のなかで辛うじてほんの一部がベストテンに入っていますが、先端技術の分野でいかに影が薄くなっているかを考えれば背筋が寒くなってきます。そう判断すれば、経済安全保障のセキュリティ・クリアランスの今国会での法成立を期するとともに、長期国債発行による大胆かつ積極的な新技術開発の促進を図らなければならないと思います。(次回の小ブログで、先端的テクノロジーの各分野における日本のランキングを分析します。)

 そして、結論的に言えば、中国が長期的に停滞が決まったかのようにイメージするのは過ちであることをあらためて認識しなければならないのではないでしょうか。

 皆さんはどのようにお考えでしょうか。

次回は
時事エッセ-
です。

 

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コメント

東アジアの黄河と揚子江の間には先史時代からエクメーネとして適した広大な平原があったが、そこから生まれる富を狙って中央アジアなどユーラシア大陸内部の様々な文化をもった民族がそこに流れ込んで争奪戦を繰り広げてきた歴史がある。それが現住している漢民族、満州民族、モンゴル民族、さらには周辺の朝鮮民族にも共通した「覇者・勝者の正義」と称すべき精神文化を培ってきた。始皇帝の秦に始まり漢や唐・明からモンゴル民族の元も満州民族の清もすべて質より量の国だった。その点では欧州での生存競争に敗れてアメリカに移住して原住民を殲滅して新大陸の覇者となったプロテスタントも同じである。即ち「力がすべて」を露骨に見せて支配する習近平政権と、「自由と民主主義」という看板を掲げながら裏ではカネと武力を駆使して権力を握るワシントンの政権とは似た者同士である。ただ裏取引がどうであれ「自由と民主主義」をタテマエとしている限り国民がもつ言論や経済活動の自由度は「一党独裁」を掲げている国よりはるかに大きい。そして50年100年の長いスパンで見れば社会の自由が文明技術の進歩を促す事は過去の歴史が証明している。したがって独裁国家の機能性を生かして軍事技術など特定の分野で一時的に優位に立つことができても中共という独裁国家が22世紀まで勝者として存在することは不可能に近いだろう。なぜなら中世の独裁国家なら数百年保つことができたろうが、21世紀の科学技術は自由な経済活動によって累乗的に進度を早めるからである。

投稿: 齋藤 仁 | 2024年2月23日 (金) 08時54分

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