ロシアの侵略を考える…ウクライナの苦い教訓!
832回目ブログです
わたつみの 豊旗雲に 入日さし 今宵の月夜 あきらけくこそ
天智天皇(万葉集)
眼の前に広がる大海原の上に、帯状の旗のような雲がたなびき、その雲に夕日がさして茜色に輝いている。きっと今宵の月は神聖にして清浄な光で辺り一面を清く澄み渡らせることだろう…。
月が清く明るく輝いてほしいのと同時に、国の明るく輝かしい未来への祈りも込められています。…万葉集における天智天皇の秀歌として有名な和歌です。
今、世界の注目を集めているのは何と言ってもロシアとウクライナの厳しい戦争ですが、ロシアに、あるいは、ウクライナに、国としての明るく輝かしい未来があるのか予断を許さない状況に陥っているように思えます。
先週の小ブログで、ウクライナがなぜ祖国防衛に失敗し、ロシアの侵略を許したのかについて、①核兵器を放棄した。(代わりに「ブダペスト覚書」を、露・米・英と締結)、②100万人の軍隊を5分の1の20万人に縮小した。③大国の対立に巻き込まれないよう軍事同盟にも一切加盟せず。の3点を上げました。
そこで、そのうちの重要な①の核兵器の放棄について、詳しく見ていきたいと思います。(ウクライナ人国際政治学者のグレンコ・アンドリー氏の論稿を一部参考)
・1994年、核兵器の放棄(非核化)と引き換えに、ウクライナの独立や領土の保全、安全の保証を約束した「ブダペスト覚書」を、露・米・英・ウクライナ間の4か国で締結。1993~96年に核兵器の処分作業が行われ、96年2月に最後の核弾頭がロシアへ輸送された時点でウクライナは「核保有国」から正式に「非核国」なりました。
・そして、ウクライナは無条件で核兵器を放棄したかわりにどのような安全保障を得たのでしょうか。交渉の結果が、露・米・英・ウクライナ間で締結された『ブダペスト覚書』(英語名Budapest Memorandum・正式名称は「核不拡散条約の加盟に際し、ウクライナの安全保障に関する覚書」)です。それを見ると、外交の駆け引きは、表は誠実を装いながら裏は詐欺まがいの嘘にまみれた不実があからさまになっています。具体的に見ていきましょう。
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「ウクライナ、ロシア連邦、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国、アメリカ合衆国は、ウクライナが非核国として核不拡散条約に加盟することを歓迎し、決まった期限内に国内にあるすべての核兵器を処分するというウクライナの約束を考慮し、冷戦終結を含め、大幅な核戦力の軍縮を可能にした、全世界における安全保障状況の変化を強調し、以下のことを確認する。
① 露英米は、ウクライナの独立、主権、現在の国境を尊重する義務を確認する。
② 露英米は、ウクライナの領土統一と独立に対し、武力威嚇及び行使を控える義務を確認する。また、自衛及び国連憲章に定まった場合以外に3カ国の兵器がウクライナに対して使用されることはない。
③ 露英米はウクライナの主権内の権利を侵し、自国の利益に従わせることを目的とする経済圧力をかけることを控える義務を確認する。
④ 露英米は、ウクライナが侵略被害者となった場合、もしくは侵略の威嚇を受けた場合、国連安全保障理事会に対し、至急、ウクライナを支援する行動を起こすことを要求する義務を確認する。
⑤ 露英米は、自国及び同盟国が攻撃を受けた場合を除き、核不拡散条約に加盟している非核国に対し、核兵器を使用しない義務を確認する。
⑥ ウクライナと露英米は、以上の義務遂行について、疑問が生じた場合は、話し合いを行う。
この覚書は署名された瞬間から有効になる」
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・覚書はあくまでも覚書であり条約ではありません。それにしても、この覚書は「甘い文言」の羅列であり、すべて、義務を確認するという言葉で〆られています。したがって、今回のロシアの侵略に対する「国連ロシア非難決議」にしても非難はしましたよとのアリバイであり覚書には違反していないのです。
・と同時に、ロシアの不実にはたまげます。核兵器使用の恫喝を含め、すべての項目に違反する形となっているではありませんか。これは、ロシア人、ロシア、ソ連、独裁権力志向の本質的DNAを内包していると考えた方が良いのかもしれません。
・ロシア研究の第一人者である筑波大・中村逸郎教授は著書『ロシアを決して信じるな』のなかで “嘘に嘘を重ねるのがロシア流” だと次のように述べています。
「相手を信じやすく、だまされやすい人は、すぐにロシア人の恰好の的となり、だまされてしまう。このタイプの人間には、嘘の約束をするのが一番だ。逆に、頑なに相手の要求を拒否する人よりもずっと扱いやすい。だって嘘だとわかっても、相手は『そんなはずはない。なにかの誤解でしょう』と勝手に信じ込んでくれるからね。だから、ロシア人はどんどん嘘の約束を重ねていけばいいだけのこと。実際には何も実行しなくてすむし、失うものはないので、こんな楽な相手はいない」(知人のモスクワ市元ソ連共産党地区委員会の幹部の話から)
「ロシア人は嘘がばれてしまっても“悪いのは嘘をついた自分たちではない。気付いた相手に非がある”と開き直る。ロシアの流儀は、交渉のはじめに嘘をついておく、つまり、嘘から交渉をスタートさせるというものだ。」
・さすがにロシア研究の第一人者の慧眼に目を見張らされます。とすれば、日露交渉においては、安倍元首相、森元首相、鈴木宗男議員もプーチン氏の嘘に踊らされてきたのでしょうか。
・今、デレビマスコミの寵児になっている元大阪府知事/大阪市長の橋下徹氏のウクライナ対ロシアの戦争についての発言があまりにもレベルの低さにおいて指弾を浴びています。
「人命より大切なものはないんだから」
「逃げることは恥ずかしいことでもなんでもない。国を捨てることでも何でもない」
「ロシアが瓦解するまで国外で退避したっていいじゃないですか。全ウクライナ国民を10年から20年ほど国外に退避させて、その後に国へ帰ってからウクライナを再建したらいい」
どうしようもなく軽く、机上の空論、能天気、思いつき、支離滅裂、お花畑。橋下氏の脳内には浮かんでこないのでしょうが、世界には人命よりも国家の名誉ある存続を望む人々も多数存在していることを知らなければなりません。橋下氏には、国内地方政治家の方がお似合いだと思います。
ウクライナとロシアの行く末に注目するとともに、わが国の本格的な安全保障の確立に向けての大胆な施策を求めたいものです。
ロシアの侵略におけるウクライナの苦い教訓に学ぼうではありませんか。
みなさんはどのようにお考えでしょうか。
次回は
時事エッセー
です。
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