参議院選・党首討論会 … 空虚な石破首相発言!
936回目のブログです。
望 海(海を望む) 藤井 竹外
鵬際晴開九萬天(鵬際<ほうさい>晴れ開く 九万の天)
無人之島定何邊(無人之島は定めて 何れの辺なる)
追風狂浪如奔馬(風を追う狂浪 奔馬の如く)
忽触巉礁砕作煙(忽ち巉礁<ざんしょう>に触れ 砕けて煙となる)
鵬のかけめぐる大空(=水平線)は晴れわたっていて、海と空とがどこまでも遠く連なっている。かねて聞いていた無人島というのはどのあたりにあるのだろうか。島は見えないが、多分あのあたりにあるのであろう。海上に、風に乗って狂い寄せる波は、まるで奔馬のような勢いで寄せてきて、たちまち険しく切り立った岩にぶつかり、砕け散って煙のように飛び散る、まことに壮快な眺めである…。
さて、政治は、内政・外政ともに多事多端の様相が永らく続いています。国際政治においては、ウクライナ対ロシアの戦争、イスラエルとイランの戦争、米と中の対立、米国トランプ関税貿易戦争など、目まぐるしく動いており一時も目を外すことは出来ません。
一方、国内政治では、ここ数年、緊張感なき出鱈目な政治が続いており、国民の不満も抑えがたく、来る参議院選で大波乱の時を迎えそうな状況になって来ました。
ここで、一度、政治の基本について冷静に考えて見たいと思います。
去る7月2日、参議院選(7月3日公示、7月20日投開票)を前に、8党の党首による討論会が日本記者クラブ主催で行われました。その時、各党首が掲げた『最も訴えたいこと』をご覧ください。
・石破茂(自由民主党総裁)
『この国の将来に責任を持つ』
・野田佳彦(立憲民主党代表)
『物価高からあなたを守り抜く』
・吉村洋文(日本維新の会代表)
『社会保険料を下げる改革』
・斉藤鉄夫(公明党代表)
『物価高を乗り越える経済と社会保障の構築』
・玉木雄一郎(国民民主党代表)
『現役世代から豊かになろう。そして全世代へ。』
・田村智子(日本共産党委員長)
『自公少数で消費税減税』
・山本太郎(れいわ新選組代表)
『物価高だけに矮小化するな』
・神谷宗幣(参政党代表)
『日本人ファースト』
8党の党首の「最も訴えたいこと」(キャッチコピー)を並べてみると、表面的にはすべてもっともらしい文言が挙げられていますが、何か物足りなさを感じざるを得ません。
…それは、品格のある言葉がないことです。
代表例として、自由民主党総裁・石破茂氏の掲げた『この国の将来に責任を持つ』という言葉を取り上げて見たいと思います。氏には責任という言葉は全く似合いません。上の写真をごらんください、問題はそのことではなく、石破氏が間違いなく、「わが国」とは書かずに「この国」と表現していることにあります。
30年以上も前になるでしょうか、メディアや政治家がこぞって、それまでの「わが国」という言い方を「この国」というようになりました。これは、とりもなおさず、著名な小説家、司馬遼太郎のベストセラー「この国のかたち」という評論文の影響にほかなりません。
わが国のリーダーが、自らの皮膚に密着した言葉である「わが国」という表現を捨て、あえて自分自身と距離を置く「この国」という言葉を使うことには、おそらく大きな心の変化があったに違いありません。
それは、国というものを、自然な感情から捉えるのではなく、客観的に見るようにし、いわゆる自然な愛国心から、距離を置こうとしたことを意味します。そういう感覚が、国を愛する気持ちを徐々に弱くしていったように思えます。
江藤淳さんによりますと、司馬遼太郎が『この国のかたち』と言った時、日本に対して、敢えて知的な距離を設定し、「そのかたち」を見直そうという意識をもっており、その時期の日本と日本人にとっては、貴重な試みであったと述べています。
そして、彼はこうも付け加えています。この司馬遼太郎の発想は、静的なものであり、「この国」と言い替えるとき、“心の底に疼くかすかな疼痛” をどこかに捨て去ってはいなかっただろうかと。
それでは、混迷する国の状況をどのように見ればよいのか。石破首相においては、今の日本を、「この国」として、静的に、冷たく、評論家的、客観的に見るのではなく、「わが国」として、愛情を込め、同胞としての生き生きとした、ダイナミックな存在として見るべきだと思います。
今、求められているのは、「わが国の姿」をどのようにするかであり、「この国」の根本を、外国の基準、思想、思惑に合わしていくことではありません。
わが国のリーダーには、ぜひとも、「取り戻すべき日本の姿」を描いて欲しいし、「わが国」という愛情溢れる言葉で語っていただきたいものです。
7/8、石破首相は、アメリカのトランプ大統領が、日本からの輸入品に対しては25%の関税を8月1日から課すとしたことについて「誠に遺憾だ」と述べましたが、遺憾砲の常套句は、もう結構です。自己の保身のためではなく、真摯に日本のために力を尽くして欲しいものです。
今は、暑い盛り。冒頭に掲げた漢詩、『海を望む』(藤井竹外)を読み、浩然の気を養ってはいかがでしょうか。
次回は
時事エッセ-
です。
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